プロ野球の未来像を日本野球機構(NPB)斉藤惇コミッショナー(79)に聞いた。野村証券副社長、日本取引所グループCEOという経歴を持つビジネスマンは、どんな絵を描いているのか。

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昨季のプロ野球は、1試合平均観客数(2万9779人)が初めて米大リーグ(2万8830人)を超えた。DeNAや広島といった15年前まで閑古鳥が鳴いていたチームが連日の大盛況。2004年(平16)には球団合併の対象だったロッテも球団買収後、初めて年間黒字を記録した。ネット通販のZOZOは球団経営に興味を示した。現状をどう考えるのか。

斉藤 球団数の増減は難しい問題だ。平成の大課題になって、近鉄が消えるとか大きな問題が起きた時に、真剣に新しい参加者の楽天などが討議された。今は非常に安定している。12(球団)で(セ、パが)6、6で。大洋、近鉄など財政的に厳しいところがあったが、今は観客が多い。特に球場を持っているところは収益が安定している。そうでないところも強いチームを持って、経済的な問題がない。だから球団を増やす、減らすという問題は、アクシデントがないと、普通の状態では、ないと思う。

12球団が適正という認識だ。一方で横浜、マツダなど球場の収容人数は限界に近づいている。大リーグは16から30と球団を増やしたが、日本は1958年(昭33)から12のまま。球団増への懸念は、1球団あたり利益の希薄化(ダイリューション)だ。

斉藤 (球団増は)1つの方策ではあるでしょう。「パイが大きくなる」と前向きに考える方も「全体は変わらないのに球団だけが増えて(収益の)ダイリューションを起こす」と考える方もいるでしょう。私が、どうあるべきとする問題だと思わない。総意で「確かに(ファンが)あふれ出したぞ」「じゃあもう1つ2つ」とファンの声がものすごく出てくれば。おかげさまで、球団を持ちたいという方が複数おられます。名前は挙げられませんが。

米国生活が長い。米国を参考に、球団が球場の経営権を所有してのボールパーク化を推奨する。

斉藤 球場施設をみんな持つのがいい。広島など球場のロケーションとか施設によって人気、収益が全然違います。球場のファシリティー(設備)をもう少しビジネス的に面白く。米国は、野球だけじゃなくオフの時に音楽会、フラワーショーとか非常に面白く造っている。3万人で満杯より、もう少し入る施設。これは私たちより、オーナーのビジネス感覚ですからね。(敬称略=つづく)【斎藤直樹】