明大が「御大」の御前で年明けに志した通り、日本一に輝いた。17日の大学選手権決勝、佛教大戦に6-1で勝ち、38年ぶり6度目の優勝を成し遂げた。
1月7日、東京・府中市の明大グラウンド。この日が19年の始動日だった。早朝5時15分、室内練習場に「ヨッシャー!」の声が響く。全員でウオーミングアップをこなし、6時前に屋外グラウンドへ移動。新春の夜明け前に、小走りの足音だけが響く。善波達也監督(56)が「まだ早朝だから、心の中で叫べ」と伝えたナインはシャトルランを始めた。
往復50メートルのダッシュを、10秒間隔で10往復。それを5セット。新年の初動にしては、かなりきついメニューだ。「年末年始にサボっていたかどうか、これで分かるからね」と善波監督。主将の森下暢仁投手(4年=大分商)が「きつい時こそ周りを見よう」と声をかけながら、盛り立てる。
東の空がオレンジ色に染まり始めた6時半。ナインは息を切らしながら、グラウンドを見つめる島岡吉郎元監督(享年77)の銅像の前に移動した。
善波監督が「変わるにはいいタイミング。やりたいこと、やるべきことを区別して、やるべきことには順位付けしよう。1日1日積み上げていってほしい」とナインに伝えた。続いて、主将の森下が前に立つ。
「新年、おめでとうございます。新チームがスタートしてから2カ月ほど。前でしゃべるのは苦手でしたが、毎朝しゃべってきて、徐々に伝えられるようになってきたかと思います。小さい積み重ねをしていったら、成長につながると思う。頂上をと思ったらコツコツ積み重ねないといけない。リーグ優勝するためにはもっともっと目の色を変えないといけない。法政、慶応…苦手意識を持っている相手に、もっとレベルアップしないといけない。どうやったら優勝できるか、日本一になれるかを考えて、これから1年間頑張っていきましょう」。
森下は白い息を吐きながら思いを伝え「おお、明治~」と高らかに切り出す。日の出とともに全員で校歌斉唱し、島岡御大の前で気持ちを新たにした。あれから161日。「秋じゃないぞ。春だ。圧倒的な力を出してほしい」と善波監督に冷え切った背中をたたかれた森下は、期待を裏切らなかった。【金子真仁】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)