今シーズンの戦いで思い出すのは阪神担当キャップだった03年、闘将・星野仙一の下、18年ぶりリーグ優勝を果たしたシーズンの少し“不思議なこと”だ。あれだけ強かった星野阪神だが全球団に勝ち越しての「完全優勝」はならなかった。当時は交流戦はなく、セ・リーグ相手の話だ。
2位になった中日だけに負け越したのである。闘将が01年まで中日監督だったのは知られるところ。そんな因縁があってかどうか、指揮官・山田久志(現・日刊スポーツ評論家)率いるドラゴンズの前に勝ち越しはならなかった。
そして今季だ。03年同様に圧倒的に強いチームとして快進撃を続けるが、まだ勝ち越せない相手がいる。これも中日なのだ。前日19日に勝ち、対戦成績を8勝8敗のタイに戻していた。この試合に勝てば、セ・リーグ全球団に勝ち越しとなるチャンスだったが1-2で敗戦。再び負け越しとなったのである。
以前に指揮官・藤川球児にそのあたりを聞いてみたが「他球団の話だし、どちらにしても失礼になるかもしれないので」と明言は避けた。では敵将・井上一樹はどう考えているのか。元監督・矢野燿大時代、ヘッドコーチとしてタテジマのユニホームを着た存在でもある。中日担当記者に交じって聞いてみた。
「なんで、こっちにおるんよ?」。ドラ番記者の中にいるこちらに真顔で言う井上にズバリ、聞く。なぜ中日だけ阪神に分がいいのだろうか。
「たまたま。阪神に強いなんて、そんなこと、口が裂けても言えんよ。ただ強いチームに臆さずプレーしていく気持ちは持てよとは言ってる。それがいい方に出ているのかもしれない」。そう率直に答えた。
数字的に言えば1勝だけのことだが、ここに阪神が緊張感を持たなければいけない理由はあると思う。以前から何度も書いているが完全な独り旅状態になっている今季。ここからは相手は「阪神にだけは負けん」と思って向かってくると言っていい。
特にAクラスに入り、クライマックスシリーズで対戦する可能性があるチームはそうだろう。カタキのごとく向かってくる相手を返り討ちにする強さが必要だ。攻守走、そしてメンタル。開幕からここまで勝ってきて、今更どうこうもないのかもしれないが、今後をにらみ、その部分は重要では、とあらためて思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




