大会NO・1左腕、横浜(神奈川)及川(およかわ)雅貴投手(3年)の世界は、3回に暗転した。下位打線への連続四球から崩れ、上位打線に集中打を浴び5失点。明豊にKOされ、右翼守備へ回った。「力んでしまった。これが今の実力です」と唇をかんだ。

狙ったインハイに速球が決まらず、自慢のスライダーを狙われた。8回から再登板し、4回6奪三振と力も見せた。「自分は波や、もろさがある」。冬はフォーム固めに誠実に取り組み、チェンジアップも覚えた。その新球は1度も投げずじまい。「まだ怖さがありました」。将来性の高さはスカウト陣のお墨付きも、開花にはまだ早かった。

センバツ出場への選考理由の1つに「及川君」と名前を挙げられた。一方で、夏へのチームの課題を問われた平田徹監督(35)は「及川ですね」と答えた。この日も12安打と打線は強力。及川がチームの勝敗を左右する存在になる。

「安定感の無さ、制球力の無さ。自分の実力不足です。全てにおいて、1からやり直しです」

背筋を伸ばし、誠実に質問に答え続けた。夏こそ、自分の投球を。ファイティングポーズが消えるどころか、及川の目はいつになく強かった。【金子真仁】