飯山が伊那弥生ケ丘を延長戦の末にサヨナラで下し、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。延長10回2死一、三塁、常田唯斗投手(2年)が中前サヨナラ打を放った。長野大会決勝の延長戦は2015年上田西-佐久長聖戦以来。公立校同士の決勝は89年の丸子実-岡谷南以来30年ぶりだった。

延長10回2死一、三塁。打席には6回途中からロングリリーフの常田。初球、伊那弥生ケ丘の抑え富永悠斗投手(3年)のスライダーが外れ、2球目もボール。打者有利のカウントから、3球目はストレートがやや甘く入った。

常田はバスターの構えから、コンパクトなスイングでとらえる。打球は中前へ。三塁走者の倉科勇雅捕手(3年)が跳びはねながら甲子園を決めるホームイン。ベンチ入りメンバー唯一の2年生は「3年生とハグしたり、喜びあったり、本当にうれしかったです。僕以外はみんな3年生ですが、みんな良くしてくれて。このチームで甲子園に行けてうれしいです」と、笑った。涙はない。

吉池拓弥監督(28)は打ち勝つ野球を掲げる。そのために、選手は自主的に新年から3月までに5万スイングを振り込んできた。慣例だった3万スイングから5万に増やした。その分だけ苦労したが、振った分だけ打球は強く速くなった。

チーム内では部室の掃除がちょっとした話題になっている。遊撃の石沢太一(3年)がこの大会期間中に部室を掃除するようになった。これを見たチームメートが「どうして?」と聞くと、石沢は「心を入れ替えたんだよ」と笑って答えた。それがきっかけになり、チームの数人が部室や、廊下、練習施設内を掃除している。

石沢は「なんか、自分の身の回りでできることないかなと思って、部室掃除してみようと。そしたら、次の試合で先制点につながる貢献ができたので、やっぱりいいことあるんだなと。それから続けています。準決勝の後も部室の床全体をきれいにしてきました!」。延長10回1死一、二塁で石沢の中飛で二走倉科が三進しており、光る働きだった。石沢は試合後「甲子園行くまで、掃除は続けます」と、ニコッと笑った。【井上真】

◆飯山 2007年(平19)に飯山北、飯山南、飯山照丘が統合されて創立された公立校。普通科、探求科、スポーツ科学科があり、生徒数は621人(女子269人)。野球部は07年に創部。部員数は68人。主なOBは越路吹雪ら。所在地は飯山市大字飯山2610。林秀徳校長。