今春センバツ優勝の大阪桐蔭が「無敵」の圧勝優勝で、2年連続12度目の甲子園出場を決めた。

宿敵の履正社と9年ぶりの大阪大会決勝。機動力封じのため、左腕の前田悠伍投手(2年)を先発に起用し、1回、いきなりけん制で刺した。西谷浩一監督(52)の「足さえ殺せば有利」という用兵が的中した。今大会7試合で計54得点1失点と投打のバランスは抜群。昨秋の明治神宮大会からの「秋春夏3連覇」に初挑戦する。

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これが覇者の姿だ。相手の長所を徹底してつぶす。大阪桐蔭がプレーボール直後、立ち合いを制した。1死一塁。左腕エース前田が立て続けに3球、一塁けん制を入れる。打者を追い込んだ直後、再び、矢のような球を投じた。虚をつかれた西稜太外野手(2年)を刺した。今大会3盗塁の足を抑え、宿敵に痛烈なメッセージを伝えた。

西谷監督は「足さえ殺せば有利になる。前田はけん制がうまい」としてやったりだった。履正社は今大会23盗塁を誇るが、成算があった。優勝した春季府大阪大会の決勝。2盗塁を決められたが、履正社・多田新監督の戦い方に触れ、盗塁タイムも周到に測ってきた。指揮官は確信があった。

「とにかく走るのが多田先生の狙いかなと。ちゃんとクイックして、捕手がしっかり投げれば、数字上、盗塁は絶対にされない」

左投手の先発は足封じの思惑もあった。一塁に正対し、走者ににらみをきかせられる。前田も「足を絡めると新聞で読んでいた。走者を刺す場面で刺せた。うまくリズムが戻ってきました」とうなずいた。投球も本来の姿に近づいた。速球は抜群のキレを見せ、自己最速を148キロに更新。8回無失点で貢献した。野手も12安打で7点を奪った。

野球に打ち込む時間の長さが強さを生む。7月、寮の食堂で声がはずむ。「横浜、サヨナラやったな」。全寮制で携帯電話は禁止。全国の強豪の戦況が気になり、松尾汐恩(しおん)捕手(3年)がリモコンの「dボタン」を押した。甲子園出場を決めた学校をテレビのデータ放送で知るという。いまの高校球児はYouTubeで情報収集するがナインは見られない。だが、星子天真主将(3年)は言った。

「自分のプレーや自分のスイングに目を向けているので。そっちの方がいい」

自らを見つめて、野球を磨いてきた。春季近畿大会決勝で智弁和歌山に敗れ、公式戦29連勝で止まった。流した涙も力に変えた。堂々の歩みで3度目の甲子園春夏連覇に挑む。西谷監督は言う。「ワクワクしています。秋春夏、ウチとしては挑戦したことがない」。46イニング連続無失点でフィニッシュ。投打ともにスキはなく、同校初の秋春夏3連覇に挑む。【酒井俊作】

 

▽大阪桐蔭・松尾(前田とバッテリーを組んで1回に4度のけん制で一塁走者を刺す) 刺したヤツは僕のサイン。(最初のけん制3球を)アレは前田です。相手は足を使いたい。けん制でしっかり圧をかけながら、バッテリーで圧をかけた。

▽大阪桐蔭・星子(3回にチーム初安打で出塁し先制のホームを踏むなど2安打) (履正社先発の増田は)変化球がはっきりしていた。低めの球を捨てて、高めに浮いた球を狙う。解析通りでした。

◆大阪桐蔭 1983年(昭58)創立の私立校。生徒数は1896人(女子850人)。野球部は88年創部で部員数64人。甲子園出場は春13度、夏12度目。優勝は春4度、夏5度。OBに巨人中田翔、西武森友哉ら。大東市中垣内3の1の1。今田悟校長。