置いてきぼりはゴメン。早出特打に励んだ助っ人を神は見捨てなかった。不振の阪神マウロ・ゴメス内野手(30)は、助っ人大砲としては異例の早出特打を敢行。5回1死一塁で、トンネルを抜ける左翼線適時二塁打をかっ飛ばした。14打席ぶりにHランプをともすと7回にも中堅左に豪快な二塁打。4番に当たりが戻れば、借金なんてすぐに返済や。
歓声が乱れることなくピタリとそろった。ゴメスが奏でた快音の重大さは誰もが分かっていた。5回1死一塁。DeNAモスコーソの3球目にようやくタイミングが合った。ジャストミートした打球は左翼の左に勢いよく飛んだ。
緑の芝に弾んだボールを見て、甲子園のボルテージは急上昇だ。到達した二塁ベース上でゴメスも大きく手を回し「バチン」と拍手。4日巨人戦(東京ドーム)の第1打席以来、14打席ぶりの安打で長いトンネルを抜けた。待望の適時二塁打がたまりたまったモヤモヤを吹き飛ばした。
この数時間前、ゴメスは行動に出ていた。室内練習場での試合前練習で1人、マシンを相手に黙々と打ち込んだ。そろって飛び出すマートンはそばにいない。練習場の一角でオマリー打撃コーチ補佐と2人っきりの打撃練習だ。バットを遠回りせずに最短で出す修正だった。前日7日には5打数無安打で敗戦の一因となった。30分以上にわたった外国人選手では異例の早出特打は、効果てきめんだった。7回2死からも中堅への二塁打。和田監督も4連敗の中で「唯一の収穫だった。状態が上がってくる感じがあったな」と目を細めた。
不安な日本2年目のスタートの裏で、実は1つの進化を見せている。テーマは「2つの目」。昨年喫した166個の三振の減少だ。今年は打撃時の左足の位置を少し三塁側に開く。右目でボールを見ることで、外角低めの見極めを正確にするのだ。オマリー打撃コーチ補佐は「ボール球を徐々に見られている。後は打つポイントだけだよ」とうなずく。開幕10試合の打率は昨季の3割9分と比べると2割1分1厘に悪化。それでも1年前から三振は3個減らし、四球を2個増やしている。捉えるポイントさえつかめば、昨年以上の飛躍にも期待大だ。
猛虎打線はこの夜も覇気がなかった。ゴメスは試合後、報道陣の問いかけを押し切り無言でクラブハウスへ駆け込んだ。それでも2本の長打は色あせない。希望の光はここにあった。【松本航】
◆早出特打とは 甲子園で午後6時開始のナイターの場合、阪神は午後2時ごろから若手選手中心の早出練習が始まる。ベテラン、主力は午後2時20分ごろにグラウンドに出る。ゴメスとマートンは、屋内でのトレーニングを終えて午後2時半~3時ごろに姿を現す。早出特打はフリー打撃の前に、打席機会が少なかったり不振の若手選手が打ち込むもの。室内での練習だったこの日は、ゴメスが午後2時から体を動かし軽い守備練習の後、マシンに向き合った。



