不思議な力が後押ししてくれた。日本ハム大野奨太捕手(28)の秘めた思いが結実した。中日戦の6回に決勝の適時二塁打。先発大谷やチームだけでなく、3日前に天国へ旅立った青年へささげる一打だった。
三塁側内野席に、遺影を手に声援を送る夫婦がいた。札幌市在住の兜純彰(かぶと・よしあき)さん(53)と真由美さん(49)。27日に長男の智希さんが19歳の若さで急逝した。大野の大ファンだった。生後6カ月の時、難病の筋ジストロフィーと判明。筋力低下が進行し、小学3年から車いす生活。大好きな日本ハム、扇の要を守る大野の活躍が生きる活力だった。
昨年9月、知人を介して2人は対面した。「いつも応援してくれてありがとう」。ヒーローを前にした智希さんは母真由美さんが「見たことがない」と驚くほどの笑顔を見せたという。「なんでも聞いていいよ」という大野に質問攻め。その中の1つは「大谷選手はどんな選手ですか?」。大野は「ギアを上げるタイミングがあってね…」と、この日の快投を説明するように優しく教えてあげた。以来、病気と闘う青年を応援してきた。
この日は智希さんが今季初めて観戦する予定だった。願いはかなわなかったが、今季6試合目のスタメン出場と重なった。両親は「智希のために打ってくれたのかな」と、涙ながらに喜んだ。事前に訃報を聞いていた大野も「感じるものがありましたね」。選手会長の活躍は、きっと天国にも届いたはずだ。【木下大輔】



