太くて強いメンタルが勝利を呼び込んだ。巨人大竹寛投手(32)が中日を相手に7回2安打無失点の好投で、5月13日以来となる2勝目。決め球シュートに加え、今オフ取り組んできたフォークも交え、5回まで無安打に抑えるなど、中日打線を牛耳った。チームは2連勝で貯金を2とした。

 大竹が決め球に選んだのは、想定外の球だった。2回無死。前回対戦でスライダーを適時打された平田を追い込み、腹を決めた。カウント1-2から、得意のシュートではなく一時は封印したフォークを選んだ。打者の手元で鋭く落ち、空振り三振。「春から練習してきた球で空振りを取れたのは良かった」と手応えを口にした。6回2死で大島に初安打を浴びても動じず、冷静に判断。自信のあるチェンジアップで、亀沢のタイミングを外した。

 やっと、らしさが出た。この日で今季8試合目の登板。ここまでの日数はほぼ2軍で過ごした。それでも向上心は忘れなかった。プロ野球歴が短い若手から気づかされることもあった。「田口はコントロールも良くて、ポンポン投げている。俺にはかけていた」。13年目のベテランが2年目の若手の投球から学んだ。ジャイアンツ球場での練習では、毎日3キロやせるほどランニング。真っ黒に日焼けした顔で「(2軍生活は)短かった」というほど、練習に没頭した。

 なかなかチャンスが回って来なくても、メンタルは整えてきた。7月下旬。思い通りの投球ができないと、練習後にお気に入りの「ラーメン二郎」に向かった。普通サイズでも器からあふれ出る量だが、大盛りを注文。昼食後だったが「食べ終わったら、練習のときと同じぐらい汗が出たよ」とあっさり完食。心が“伸びない”ようリフレッシュを挟み、太くて丈夫な精神力を維持し続けてきた。

 昨年は右肩の故障により、9月に離脱した。今年は大事な終盤で1軍に戻り、7回2安打無失点と好投。原監督は「コンディションが非常に上がっている。前回(16日)も兆しは見えていたけど、さらに上乗せした形。ナイスピッチング。次にまた期待したい」と称賛した。“コシ”を加えた「新・大竹寛」が帰ってきた。【細江純平】