時給850円から、年俸は600万円になった。DeNA古村徹投手(25)が12日、横須賀市内のベイスターズ球場で自主トレを行った。

11年ドラフト8位で横浜ベイスターズ(現DeNA)に入団も、育成契約を経て14年に戦力外通告を経験した左腕。1軍登板の経験がないまま、打撃投手の職に就いた。その後、現役への道を捨てられずに16年に四国ILの愛媛に入団。2年間在籍の後、昨季まではBC富山に所属した超苦労人。「見返してやりたいという気持ちだけ」と5年ぶりの古巣復帰をしみじみとかみしめた。

愛媛の1年目には、台湾へ派遣され、2年目のオフの期間には愛媛県内のスキー場でアルバイトを経験。時給850円で、リフトの管理などを任された。「お金は本当に厳しかったです。何度も引っ越しもしてきましたし。こうやって戻って来られたことで、周りからは『あり得ない努力をしてきた』とか言われますけど、ずっと野球が好きだった。本当にそれだけ」。神奈川出身の古村にとって、横須賀の海風は懐かしかった。

異例のカムバック。進化の過程も、異次元だった。入団当初、球速は最速138キロだった。打撃投手を務め、愛媛に入団すると、最速は143キロに上がっていた。「自分でもびっくりしていました」。17年には147キロを計測。そして昨季、当時から12キロアップの150キロをマーク。上手投げに戻した。「一概には言えないけど、筋力アップと気持ちの部分が大きい。まだいける感じがする」と25歳にして“成長期”は止まっていない。

昨年9月に入団テストを受験し、NPB復帰を手にした。三原代表は以前、獲得に際して「退団後にレベルアップした」と話しており、左の中継ぎの一角として期待される。17年にはサイドスローに挑戦し、試行錯誤を繰り返し、上手投げに戻した。さまざまな経験でつかんだ150キロ左腕。古村は「次こそは」と地元で輝く青写真を描いた。【栗田尚樹】