プロ野球がいよいよ3カ月遅れで開幕する。東京ドームの巨人戦で開幕投手を務める阪神西勇輝投手(29)は必勝態勢だ。昨年巨人とのCSファイナルステージ第4戦で先発好投も逆転負けでチームは終戦。あの時の以来の敵地マウンドでリベンジを期す。17日の東上前には、新幹線車輌の「ドクターイエロー」と遭遇。見ると幸せになるといわれる運も味方に、コロナ禍の異例のシーズンで開幕ダッシュを導く。

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東京ドームに到着すると、西勇は真っ先にマウンドに上がった。「マウンドが昨年とどう違うのか。景色もそうですし。CS以来、来ていませんし、投げていないマウンドなので。戦う前の準備が一番大事だと思います」。捕手に向かってボールを投げ込むと、二塁へけん制練習。入念な準備に隙はない。今の気持ちを聞かれ「うーん、それやったらワクワクかな」と答えたが笑みはなく、戦う男の顔になっていた。

プロ12年目。巨人にはセ・リーグで唯一白星がない。昨年10月、巨人とのCSファイナルステージでは第4戦に先発。5回まで1失点好投を続けたが、同点の6回2死三塁で丸に意表を突くセーフティーバントを決められ逆転負け。目の前で日本シリーズ進出を決められ、阪神は終戦した。リベンジがかかる因縁の対決。「淡々とやることが大事だと思っています。僕のプレースタイルが変わることはない」と平常心で挑む。

巨人の開幕投手は菅野。18年オフまで4年連続でハワイ自主トレをともにした師匠と呼べる存在だ。昨年7月8日巨人戦(甲子園)のプロ初対決では、6回6安打3失点と粘るも菅野との白黒はつかなかった。「とにかくゲームを作ること、まずは。無駄なことはしないし、無駄なことをしても取り返せばいい。すべてプラス思考にやっていけばいいかなと思います」。今オフは「自分自身、変化を求めている年」とし、11年目で初めて単独トレーニングを選択。1人で鍛え抜いた成果も見せるべく、恩返しには絶好の舞台だ。勝てば球団6000勝の巨人の引き立て役にはなれない。

縁起のいいできごともあった。17日に自身のインスタグラムで、「ドクターイエロー」に遭遇したことを報告した。「自分でプラスになると思えばプラスになる。チーム便でみんなが見ていますし、そういうのも運だと思います。そういう運だったり、流れだったりとか、引き寄せられるものは引き寄せて」。東上前に幸せを呼ぶといわれる黄色い新幹線車輌を見た。CSのリベンジ、初G倒、菅野に勝利、6000勝阻止…。強力な運も味方に、異例のプロ野球開幕戦勝利をつかみにいく。【磯綾乃】

◆西勇の昨季CSファイナルステージ巨人戦 阪神の1勝3敗で、負ければ敗退の決まる第4戦(10月13日)に先発。1-0とリードの5回、岡本にソロを打たれ同点に追いつかれた。さらに6回2死三塁。同年27本塁打の強打者に意表を突く初球セーフティースクイズを決められ勝ち越しを許した。ショックの西はグラウンドに倒れ込むなどぼうぜん。7回には代わった岩崎がゲレーロに2ランを浴び、阪神は1-4で敗れて終戦。西は「最後の最後でミスが出た。来年の課題」と反省しきりだった。

◆西勇VS菅野 昨年7月8日の東京ドームでプロで初めて投げ合った。阪神が2-1で1点リードの4回2死二塁、西勇は菅野に中堅へ同点二塁打を献上。さらに6回、大城にソロを浴び、勝ち越しを許した。西はこの回で降板。一方の菅野も7回先頭のマルテに二塁打されたところで交代した。阪神はこの後追いついたが、8回にジョンソンが決勝点を許し、3-4で敗戦。西勇6回3失点は、菅野は6回0/33失点でともに勝敗はつかなかった。

◆ドクターイエロー 新幹線電気軌道総合試験車の通称。線路、架線、信号電流などの状態を走りながら点検する事業用車両。「新幹線のお医者さん」の役割を担い、黄色い車体にちなんで呼ばれる。東京-博多間を10日に1回程度往復するが、運行ダイヤは非公開のため、鉄道ファンらから「見ると幸せになれる」と縁起物のようにいわれる。