今季初の「帰ってきたセイバーメトリクス」は、パ1位のオリックス吉田正尚外野手(27)。三振が15と両リーグで最も三振割合が低いが、四球も多く、セイバーの指標の「BB/K」では2・87と優れる。長打力も発揮し川上、張本、王らレジェンドの成績に近づいている。

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吉田正の成績は、三振の少なさが際立つ。ここまで15三振で、三振割合5・7%は昨季まで3年連続で両リーグ最少のDeNA宮崎らを抑えて12球団最少。豪快なフルスイングのイメージが強いだけに、意外ともいえる数字だ。

三振が少ないだけでなく四球も選べており、リーグ5位の43四球。BB/Kは2・87で12球団断トツだ。2・00を超える選手は非常に珍しく、過去30年では06年松中(ソフトバンク=2・76)だけ。吉田正の数字がいかに突出しているかが分かる。

BB/Kの高さだけでなく、長打を打てるのも吉田正の特長だ。純粋な長打力を示すISO(長打率-打率)とBB/Kの2つを高いレベルで兼ね備えた選手は少ない。シーズン400打席以上で「BB/K3・00」と「ISO・200」をクリアしたのは、3度の王(巨人)ら過去5人(7度)だけ(吉田正のISOは・193)。BB/Kの高い選手は巧打タイプが多く、長打力も兼ね備えた選手は珍しい。クリアしたのはいずれも通算2000安打以上の大打者だけで、今季の吉田正の成績は、レジェンドに匹敵する内容だ。【多田周平】

○…吉田正と対照的なのがスパンジェンバーグ(西武)だ。11四球に対して、85三振でBB/Kが0・13。シーズン400打席以上の選手では06年吉村(横浜)の0・09が最も低く、0・15未満は過去11人だけと、こちらも珍しい。ここまでの三振割合35・1%は非常に高く、35%以上は過去にブライアント(近鉄)だけ。ブライアントは90年の43・0%など、3度も記録している。

◆BB/K 今季のNPB平均は0・47で、四球より三振が多い選手がほとんど。過去3年の上位も、1・00を超えるのがシーズンに数人程度いるだけで、吉田正の2・87は突出している。上位陣のISOは、長打力の高くない選手がほとんど(ISOは平均が・140前後で、・200以上で優秀とされる)というのも分かり、今季の吉田正の異質さがうかがえる。