グッと握った拳を突き上げた。オリックスのラオウ杉本が、2点を追う9回1死二塁から起死回生の同点22号2ランを放った。「北海道に来てから、ずっとやられっぱなしだった。本当に悔しかった」。連敗中のチームを救う一撃で、今季初の同一カード3連敗を阻止。杉本は一塁ベースを回る際に、右手人さし指を立てた。劇的アーチの感動を伝えたい人がいる。打撃手袋を借りているT-岡田だ。

「Tさん、はよ帰ってきてください…」。右太ももを痛めて離脱中の先輩に激烈エールの1発。今季開幕直後の4月にはT-岡田が使用していたディオールの香水を“無断使用”して打ちまくっていたラオウが、優しい兄貴分に感謝の1発を送った。

9回に4点差を追いついての価値ある執念ドロー。中嶋監督は「今日のは、よく追いついた。本当に最後よく打った」と杉本を褒めた。

T-岡田の離脱後は“代役”として一塁も守る杉本。3日ソフトバンク戦(ペイペイドーム)への移動疲労などを考慮して、この日はDH起用だったが、最終回には右翼の守備についた。「みんながつないでくれたから、最後ああいう形になった」。ラオウ杉本は、いつも仲間を思う。【真柴健】