巨人立岡宗一郎外野手(31)が、14年目にして初のサヨナラ打となる1号ソロを放った。8回に代走で出場し、2-2の延長10回1死も打席へ。ヤクルト梅野の初球、146キロ直球を右翼席にたたき込んだ。

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かっこいい先輩でいたい。立岡がベンチに向かって、拳を握った。延長10回1死。初球を打ち二ゴロに倒れた坂本の次打者として打席に立った初球だった。ヤクルト梅野の高めに浮いた146キロ直球を振り抜いた。「勇人さんが1球でアウトになっちゃって…。打ちにいこうか悩んだんですけど、思い切っていきました」。流れを読みつつも感性に正直に従った。

手荒い祝福を受けたヒーローはかつて、後輩の前で唇をかんだ。21年2月の宮崎2軍キャンプ。若手中心のメンバーにただ1人、30代のベテランが混ざった。練習最後のメニューのロングティーのホームラン競争。柵越えした選手から抜ける“負け残り”の最後の1人は立岡だった。全力スイングで引っ張った打球は、打っても打っても、外野フェンス手前で失速した。引き揚げる若手を横目に、課せられた追加メニューに明け暮れた。

今季もキャンプは2軍で過ごし、オープン戦の終盤で1軍に昇格した。プロ14年目、チーム内の立ち位置は若き日とは異なる。「毎日、競争が激しい中でどうやって自分の価値を出すかを一生懸命、毎年考えている。正直、苦しいことばかりで、いつかこういう時が来ると思ってやってきた」。今季4打席目での初安打をプロ初の劇的サヨナラ弾に仕立て上げた。

チームにリーグ一番乗りの10勝目をもたらし、首位を堅守した。「気持ちいいです。1回はサヨナラを打ちたいと、今年始まる前に言ってたんです。ひそかな目標だったんでよかったです」。達成感が次への活力になる。目尻のシワがまた1つ、増えた。【為田聡史】