<楽天5-1ロッテ>◇2日◇楽天モバイルパーク

“のびのび野球”が、楽天岸の礎を築いた。仙台市立柳生中から無名の公立校の名取北に入学。選んだ理由は自宅から近く、野球部が丸刈り強制ではないから。当時監督の田野誠氏(51)は「本人も、こちらも『甲子園なんて』という世界の話だった」と振り返る。

入学当初の体重は49キロも、食トレの文化が部内になかった。半日で練習が終わると、仲間たちと夕方までサッカーに明け暮れた。練習試合がダブルヘッダーのときには、部員不足で2試合目は中堅手。ときおり笑顔を見せながら、グラウンドを駆け回った。

ただ、強豪校と練習試合をしても大崩れはしない。だが、味方の失策や、打ち取った打球が内野の間を抜けて失点し、敗れることが多かった。打たれていないのに点を取られる試合が続いた。それでも顔色一つ変えずに淡々と投げ込んだ。田野元監督は「勝ち負けに固執するという雰囲気も、そもそもあまりない学校。やっていて楽しいというだけだったんじゃないですかね」。

純粋に野球を楽しみ、プロで積み重ねた150勝。岸は「勝ちがつくのは難しい」としみじみ語る。節目達成も王手をかけてから5戦かかった。高校時代から知る勝利の難しさ。記録を達成した瞬間の笑顔は、どことなくホッとしたように見えた。【湯本勝大】

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