「七夕神話」は健在だった。中日小笠原慎之介投手(25)が5年ぶりの完封勝利を挙げた。初回いきなり無死二塁のピンチも、送りバントを軽快に処理し三塁で走者を刺した。9回102球、3安打の省エネ投球で5勝目を手にした。打線も13安打8点の猛攻。2リーグ分裂後、7月7日の中日は12球団トップの勝率6割4分4厘。投打がかみ合った七夕の竜が、3連敗を止めた。

    ◇    ◇    ◇

5年ぶりの完封を目前にして、小笠原が苦笑いを見せた。9回1死走者なし。カウント1-1から途中出場の羽月への145キロ直球、98球目をファウルされた瞬間だった。100球未満の完封勝利で手にする「マダックス」がなくなった瞬間。ベンチを見ながら、白い歯をこぼした。

「ベンチからすごいプレッシャーをかけられた。7回終了時であと24球しかないぞ、と。100球を超えたら代えるぞと言われた」。それでも99球目のカーブで二ゴロに打ち取った。最後の野間も追い込んでからのカーブで遊ゴロ。要所で3つの併殺打でピンチを切り抜け、9回102球3安打で、2度目の完封勝利を完成させた。

「首脳陣が信頼して送り出してくれて、結果で恩返しできた。変化球でカウントが取れているのが一番。ダブルプレーが大きかったかな。野手に助けられて自分のペースで投げられた」。もう1つの勲章を取りこぼしても、18年7月28日巨人戦以来の完封勝利に、試合後は笑いが止まらなかった。

19年から2年間は左肘、左肩の故障でつまずいた。エース大野雄に弟子入りし、2年連続で規定投球回に到達。チームの3連敗も止めた完封で、リーグ2位の96投球回に到達した。「オールスターまでに何とか100イニングという目標を立てていた。少しずつ見えているのかな。踏んだり蹴ったりの5年間だけど、少しずつ階段を上っているので、良しとします」。監督選抜で初選出された球宴までの中間目標を射程圏に入れたことが、喜びを倍増させた。

七夕での短冊に記したいことを聞かれると「ゆっくり寝られますように」。七夕の強竜を打線とともに完封で体現した左腕は、最高の眠りを手に入れた。【伊東大介】

【関連記事】中日ニュース一覧