今季限りで引退するロッテ名物アナウンス担当の谷保恵美さん(57)が、レギュラーシーズン最終戦を終えた。「レギュラーシーズンホーム最終戦セレモニー」での最後に、「レギュラーシーズン最後となりました。また今シーズン中に皆さまがこの球場にいらしていただけることを願っております。今まで…」とアナウンス途中で感極まる場面も。涙をこらえながら「ありがとうございました」と最後まで続けた。「最後のごあいさつで泣かないつもりで頑張っていたんですけれど。スミマセン、泣いちゃって」。謝罪はプロ根性だった。

球団からはサプライズセレモニーが待っていた。本人は裏方として表に立つことは遠慮してきたが、球団スタッフにうながされ、グラウンドへ。吉井理人監督(58)、益田直也投手(33)、中村奨吾内野手(31)からそれぞれ花束を贈呈された。ライトスタンドのロッテファンからは「タニホ、タニホ」の大コール。「グラウンドに出たくないとは言ったものの、あんなふうにしていただいて本当に感激です。1800試合の時にヒーローインタビューのお立ち台にちょっと上がったことはあるんですけれど、花束受けるなんてちょっと感激してしまいました。超満員の360度見渡す限りお客さんがいる中で、コールしていただけて、こんなことは2度と、来世でもないと思うので、本当に大事に心の中にしまいたいと思います」。目いっぱい上げた右手を振り、四方に頭を下げて感謝した。

ホームベース付近では、監督、選手らと記念撮影。スコアボードには通算2100試合となったことを記念する「谷保2100GAME」「EMI TANIHO THANK YOU FOR YOUR VOICE」の文字が映された。さらに1番から9番の打者、ピッチャー益田のメンバーの下に、守備位置をマイクの絵文字にし「谷保」と表示された。

球場には、吉井監督、コーチ一同、選手一同の他、他球団や、かつて在籍した選手らから数多くの花が届いた。人望の証しだ。「『あれっ? 誰のお花なんだろう』と思ったんですけれど『谷保さんへ』って書いてあったので、ビックリしまして。うちにいた選手の方や他球団さんからも。どうやってお礼をしたらいいんだろうと思うくらい素晴らしいお花をいただいてしまって感激です。全部持って帰りたいです」。笑顔の花も咲いた。

33年間、大きな病気やケガもなく選手と一緒に戦い抜いてきた。声で支えられた選手も多い。勇気づけられてきたファンもいる。「今日、無事に風邪もひかずに終えられたことが一番良かったですし、それが一番ほっとしています。褒めてください」。美声も体も鉄人だ。【鎌田直秀】