広島の田村俊介外野手(20)が17日、チーム初の対外試合となったロッテ戦(コザしんきん)で先制2ランをぶちかました。1軍通算10試合出場ながら、3月6&7日の侍ジャパン強化試合・欧州代表戦(京セラドーム大阪)に選出された左打ちの注目株は「4番右翼」で出場。その1打席目に起用に応え、チームの24年1号を放った。周囲の期待が膨らむ中でも泰然自若を貫く若き侍が、日に日にその存在感を高めている。

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鋭い眼光が甘く入った球を見逃さなかった。1回2死一塁。新井体制2年目の初陣で「4番」起用された田村は、ロッテ東條の直球にバットを一閃(いっせん)。角度良く右翼方向へ上がった打球はそのまま右翼席芝生に跳ねた。今年初の対外試合、初の4番での初打席、初スイングが目の覚めるような1発となった。

「しっかり前で打つことをやっていたので、自分のポイントで打てました。やってきたことができたかな」

昨季終盤、つかんだ感覚を磨き続けている。力を抜くことで無駄なくバットを振れるようになり、新井監督からの「泳いでいいから前で打て」という助言も生きている。宮崎・日南での1次キャンプ紅白戦2試合に続き、実戦3試合すべてで安打を放ち、この日はチームの24年初本塁打。5回には右翼守備で松川の一塁側フェンス際への飛球をジャンプ一番でつかみ取り、攻守で存在感を発揮した。

1軍通算10試合出場ながら、侍ジャパンに選出された。キャンプ初日から個別取材が連日のように続き、練習後も報道陣に囲まれる日々。それでも「周りの声は、あまり気にはならない」ときっぱり。周囲の高まる期待、集まる注目にも、冷静さを保つ。ただ、2打席目以降は、冷静過ぎる側面が凡退につながった。「ヒットを狙いにいき過ぎて逆に空回りした。長打の後の打席もいい打席が増えるようにしたいです」。大振りにならないよう意識した結果、2つの外野飛球と空振り三振。目先の結果に満足しない姿勢が頼もしい。

新井監督も「見逃し方を見ても打席の中で落ち着きがありますし、昨年の経験が自信になっているなと思います」と目を細める。秋山、野間が日南で調整を続ける中、若手の外野争いで先頭を走る。「僕だけが打っているわけではないですし、まだまだ争いの中なので、もっと継続して結果を出せるようにしたい」。その目は、西川が抜けたひと枠でなく、外野の1番手を見つめている。【前原淳】

◆田村俊介(たむら・しゅんすけ)2003年(平15)8月25日生まれ、京都府舞鶴市出身。愛工大名電では1年からベンチ入りし、3年夏に甲子園出場。21年ドラフト4位で広島入団。23年開幕戦で代打で1軍デビュー。9月12日ヤクルト戦でプロ初安打。同年は10試合、8安打、0本塁打、0打点、打率3割6分4厘。今季推定年俸700万円。178センチ、93キロ。左投げ左打ち。

▽田村俊介のプロでの足跡

◆1軍初参加で二塁打 愛工大名電からドラフト4位入団した1年目の22年2月12日、2軍キャンプでの内容が評価され、1軍に招集。紅白戦で左翼フェンス直撃の二塁打を放った。

◆オープン戦弾 2年目の23年3月17日、オリックスとのオープン戦で7回にコットンから右翼席へ同点弾。

◆開幕1軍 同年3月30日に開幕1軍が発表され、2年目で初の1軍スタート。

◆プロ初安打 同年9月12日、ヤクルト戦でプロ初のスタメン出場し、5回にサイスニードから中前打。

◆左手小指骨折 6戦連続安打をマークした同年9月17日、中日戦の9回に斎藤の内角球が左手を直撃。途中交代し、左小指中手骨骨折の診断で翌18日に出場選手登録を抹消。

◆侍サプライズ選出 2月14日、井端監督が3月の強化試合に臨む侍ジャパンメンバーに選出した。