ボクシング前WBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)がWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)-WBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)の2年7カ月ぶり再戦を会場で見届けた。Amazonプライム・ビデオのライブ配信で特別ゲストとして来場。国内外で注目された3団体王座統一戦に熱視線を送り、本紙に観戦記を寄せた。

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1回終了間際に井上がダウンを奪ったパンチは率直にすごかった。ドネアのテンプルに右クロスを入れ、もろに脳に直撃しているようなパンチだったと思う。打ちにいっているから(ドネアも)見えなかったのではないか。あの一撃と、2ラウンド目の詰め方の良さも含め、起こるべくして起こったKOと言える。

自分はプロで2度再戦しているが、再戦にはさまざまな状況があり「これ」と1つにまとめることはできない。経験上、ただ1つ言えるのはお互いのパンチ力、打つリズム、タイミングは未知ではなくなっているということ。前回とはディフェンスの意識も変わる。しかし井上は「そんなことは関係ないよ」と言わんばかりのボクシングをみせてくれた。

今回のポイントは、冷静にプラン通りに戦えるかだと思っていた。お互いにタイミングが分かっているので、両者ともパンチを回避する展開も想定していた。判定までもつれる可能性も頭にあった。前回はドネアが左ボディーでダウンするもろさもみせたが、逆に井上が攻めてドネアのカウンターを食らうことも想像した。実力を出す=必要以上のことは出さないという意味もある。冷静に作戦を遂行した選手が勝つもの。だから井上が勝ったのだろうと思う。

世界5階級を制覇したドネアのスタイルはファイターではなく、カウンターパンチャー。スーパーバンタム級から上の階級ではサイズ的な問題で先に自分から攻めなければいけないケースがあり「待ち」の試合ができなかった印象だった。相手が手を出してくれないとカウンターは打てない。ドネアのスタイルが一番表現できる階級はバンタム級だと思っていた。

前回対決はドネアもバンタム級に戻ったばかり。調整が完全ではなかったはず。今回は不安要素がないのは大きいと思っていた。そして井上戦後のドネアは世界王者2人をKOしたことも大きな自信になっていると思ったが、瞬発的なものは井上が全然上だった。2年7カ月後の再戦でも、その有利は変わらなかった。

井上は強いと思う。やはりバンタム級では無類のパンチ力を持っている。29歳という年齢的にも一番、良い時期だと思う。出会った時からアマチュアで飛び抜けて強い印象しか残っていない。この活躍、成長ぶりは自分としても想像通りというか、すごいなと思う。

ドネアとの再戦は井上の実力を思う存分に発揮できた試合だった。次は4団体統一を目指すことになるのだろう。ジョンリール・カシメロがWBO王座を剥奪されて残念だが、これから先を期待したい。WBO王者のバトラーは少し物足りないかもしれないけれど、逆に日本人初の4団体統一のチャンス。これからの井上の動向が自分も気になる。(12年ロンドン五輪金メダリスト、前WBA世界ミドル級スーパー王者)

 

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