「ゴジラ-1.0」が初期の作品の重厚なテイストを映しているとすれば、この作品には怪獣がわさわさ登場した昭和シリーズ後期のお祭り騒ぎのような雰囲気が反映されている。

26日公開の「ゴジラ×コング 新たなる帝国」は、「GOZILLA ゴジラ」から始まったハリウッド版モンスター・ヴァース・シリーズの4作目にして10周年作品。地上に止まらず、広大な地下空洞の世界を舞台に、昭和シリーズで見たような、そして見たこともないような怪獣たちが激闘を繰り広げる。

前作を引き継ぎ、地球では人類と怪獣が共生している。ゴジラの登場はまるで台風や地震のような感覚で、人々は被害を最小限に止める努力を続けている。ローマのコロッセオを寝床にゴジラが長い眠りに入り、人々がホッと日常生活を始める描写が象徴的だ。

そんなある日、モナーク(未確認生物特務機関)が異常なシグナルを察知する。地上のゴジラとの住み分けで、コングが暮らしている地下空洞に異変が起きているらしい。コングも踏み込んだことのない未知の空間には、コングサイズの類人猿の群れが暮らしており、そこでは人類の存続を揺るがす異変が起きていた。

人類の味方、コングだけでは防ぎきれない大惨事に、地上のゴジラ、そして地下に生息していたモスラも絡んで…。

モナークがコングの負傷した右腕にパワーアップのメカグローブを装着したり、エネルギーを満タンにしたゴジラの背びれが赤紫に輝いたり…。最新のVFXをふんだんに使ったシーンの連続で、ビジュアル面での見どころは多い。

一方で、前作から続投のアダム・ウィンガード監督はファミリー映画を強く意識しているのだろう。生誕地の先住民の少女とコングが意思を通じ合うのはもちろん、ゴジラもモスラも感情を宿すような描写があり、昭和シリーズ後半の「擬人化」が色濃く受け継がれている。ゴジラ新作が待ち遠しかった少年時代のワクワク感を思い出しす。

モナークの言語学者アイリーン役のレベッカ・ホール、陰謀論者バーニーのブライアン・タイリー・ヘンリー、先住民少女ジアのカイリー・ホットルが前作に続いて出演している。前作「ゴジラVSコング」を見直しておくと、いっそう楽しめる作品だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)