早くも2023年の幕が開けて半月が経ちましたが、ハリウッドは賞レースが本格化しています。

11日にはゴールデングローブ賞が発表され、スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画「フェイブルマンズ」が作品賞と監督賞の2冠を達成。また、15日に行われたクリティックス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)では、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞や監督賞など5冠に輝き、「フェイブルズマン」はガブリエル・ラベルの若手男優・女優賞の受賞のみという結果になっています。そして、いよいよ24日には満を持してアカデミー賞のノミネートが発表されます。

「フェイブルマンズ」やトム・クルーズ主演の「トップガン マーヴェリック」が最有力候補と言われてきましたが、ここにきて「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」も注目度が上がっており、予想が難しくなってきた今年のオスカー。来週のノミネーション発表を前に、作品賞10作品のノミネート予想を2週にわたってお届けします。前半はノミネートが確実視されるトップ5を紹介します。

■「フェイブルマンズ」 3月3日日本公開

巨匠スピルバーグ監督の半自伝的な作品である本作は、映画製作に夢中になる少年と家族の物語です。ゴールデングローブ賞の他、トロント国際映画祭の最高賞である観客賞も受賞しており、「映画愛」がテーマとなっているだけに、会員受けも良く、アカデミー賞でも作品賞や監督賞で候補入りすることは間違いないでしょう。

■「トップガン マーヴェリック」

(C)2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
(C)2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

22年最大のヒット作となった本作は、商業的な成功のみならず評論家からも高い評価を得ており、敬遠されがちなブロックバスター作品でありながらオスカー候補に相応しい作品です。コロナ禍で劇場から客足が遠のく中で空前の大ヒットとなり、劇場に多くの観客を呼び戻すきっかけとなったことも評価に値します。クルーズは主演男優賞でも候補入りが期待されていますが、作品賞に輝けばプロデューサーに名を連ねるクルーズにとって初のオスカー受賞となります。

■「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」 3月3日日本公開

「カンフー」と「マルチバース」を融合させた異色のSFコメディは、これまでロサンゼルス批評家賞、ワシントン批評家賞、ゴッサム賞など多くの評論系の前哨戦を制しており、クリティックス・チョイス・アワードに輝いたことから、一気にオスカー最有力候補に躍り出た感があります。主演のミシェル・ヨーも、主演女優賞で候補入りすることが確実視されています。

■「イニシェリン島の精霊」 27日日本公開

アカデミー賞2冠に輝いた「スリー・ビルボード」(17年)で知られる鬼才マーティン・マクドナー監督の最新作は、ゴールデングローブ賞コメディ部門の作品賞を受賞している他、シカゴ評論家賞などにも輝いています。主演のコリン・ファレルはベネチア国際映画祭で男優賞を受賞し、脚本賞を含む2冠を達成しているだけに、アカデミー賞でも作品賞以外に主演男優賞や脚本賞など複数部門での候補入りが期待できる作品です。

■「ター」 5月公開予定

アカデミー賞主演女優、助演男優、脚色賞にノミネートされた「リトル・チルドレン」(07年)以来16年ぶりにトッド・フィールド監督がメガホンを取った本作も、ノミネートは確実視されています。ドイツの有名オーケストラで女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ターを演じたケイト・ブランシェットの演技は高い評価を受けており、ゴールデングローブ賞やクリティックス・チョイス・アワードに続き、オスカーでも主演女優賞の最有力候補に名を連ねることは間違いないでしょう。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)