〈 本日のごのへのごろく 「私はね あっちもこっちも 私だよ」〉

 アナウンサーとして仕事をするとともに、デビュー間もないアイドルやアーティスト、またエイベックス・アーティストアカデミーの生徒たちに、トークをレッスンする講師をしています。自己紹介やライブ中のMCで役立つトークなど、伝えたいことは多岐にわたります。例えば、話の中身はもちろんだけれども、メンタルも同じくらい大事、という点。今回は、トーク編第31回「メンタルレッスン~仕事の私とプライベートの私~」です。

愛知県「ラグーナテンボス」で行われた、AAA・宇野実彩子さん(右)トークショーで司会を務めた五戸美樹(2017年7月)
愛知県「ラグーナテンボス」で行われた、AAA・宇野実彩子さん(右)トークショーで司会を務めた五戸美樹(2017年7月)

 ■本番になるとうまく話せない■

 レッスン中に質問を受け付ける時、こんなことを聞かれることがあります。「テレビやラジオの本番、となると、どうにもうまく話せません…どうしたらいいですか?」この質問、多くは、「メンバーや友達と話している時は普通にしゃべれるのに」が隠れています。

 ■人前で別人になってしまう「私」■

 楽屋では大きな声で話しているのに、本番になると急に静かになる子や、終わった途端に賑やかになる子、つまり、仕事とプライベートで別人のようになってしまう子、実はたくさんいます。

 芸能に限らず、学校で発表する時や、仕事でプレゼンする時に、まるで違う人になってしまう方、たくさんいると思うんです。

 こういった場合、「仕事の私と、プライベートの私、どっちが本当の私なんだろう」という悩みに繋がる場合が多々あります。整合性がとれない自己矛盾が生じるわけです。

プールサイドでのトークショーでした
プールサイドでのトークショーでした

 ■楽になる場合はそのままでOK■

 「仕事の私」と「プライベートの私」を分けることで、自分が楽になる場合はそのままでいいと思います。例えば、お笑いコンビ・オードリーの春日俊彰さんは、プライベートではとても静かで、仕事になるとスイッチが入って途端にハイテンションになる、とラジオでよく話されています。春日さんの場合はご本人が自分を熟知していて、あえてそうされているように感じます。

 ■本番と「私」を分けなくていい■

 つまり、「本番になるとうまく話せない」、あるいは「人前でうまく話せない」のであれば、プライベートの時と同じように話せばいい、ということです。アーティストだからってカッコつけてしゃべる必要はないですし、アイドルだからってキャンキャンした声で話さないといけないなんて法律はないわけです。

 気心知れた家族や友人といる時と状況が違うわけですから、多少の違いが出てくるのは当然ですが、かけ離れた自分になる必要はないと、私は思います。「仕事の私」も「プライベートの私」も「どちらも私」だからです。

たくさんのお客様にご来場いただきました
たくさんのお客様にご来場いただきました

 ■「私」をそのまま出せるかどうか■

 それには、プライベートのしゃべりが、そのままではあまりに難がある場合、そちらを見直す必要があります。例えばこの前カフェで隣に座っていた女の子が、友人らしき女の子に対して「っていうかマジ意味なくね?」と言っているのを耳にしました。女子同士だと言葉遣いが悪くなることは多々ありますし、“言葉狩り”をする気はありませんが、せめて「それは意味が無くない?」でいいのになぁ、と思って聞いていました。

 ■5分から始めるメンタルレッスン■

 24時間ずっと気をつけるのは疲れてしまうかもしれませんが、プライベートの時間のうち、10分でも、でなければ5分でも、「今は本番中だ」と思う時間を作ること…芸能でなくても「今は発表中だ」とか「今はプレゼン中だ」と思う時間があると、プライベートのトークは変わっていきますし、それに比例して、本番のトークも断然楽になります。 (次回トーク編は第32回「気をつけたい言葉遣い」の予定です)

五戸のトークレッスンを受けてくれているアイドルグループ「Clef Leaf」。AKIBAカルチャーズ劇場での「新人公演2017」後、楽屋にて。新人公演で勝ち抜くと定期公演のご褒美がもらえます。応援お願いします!(2017年7月)
五戸のトークレッスンを受けてくれているアイドルグループ「Clef Leaf」。AKIBAカルチャーズ劇場での「新人公演2017」後、楽屋にて。新人公演で勝ち抜くと定期公演のご褒美がもらえます。応援お願いします!(2017年7月)

【五戸美樹】(日刊スポーツ・コム芸能コラム「第49回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)