喜劇俳優、演出家で、ドラマ「名探偵ポワロ」の吹き替えなどでも知られた熊倉一雄(くまくら・かずお)さんが12日午後3時24分、直腸がんのため、東京都港区の病院で死去した。88歳だった。葬儀・告別式は親族で行う。12月1日午後2時から東京都渋谷区東3の18の3、恵比寿・エコー劇場でお別れ会を開く。

 関係者によると、今年8月中旬に体調不良となり、そのまま入院した。主演予定でこの日開幕したテアトル・エコー公演「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」も降板していた。十数年前に大腸がんの手術を受け、人工肛門を使った生活を送っていたが、入院前まで周囲には「100歳まで俳優を続ける」というほど元気だったという。

 学生時代に芝居を志し、1956年(昭31)に劇団テアトル・エコーに参加。喜劇を中心に舞台に取り組み、演出家、代表も務めた。「サンシャイン・ボーイズ」など、米作家ニール・サイモンの作品を日本に紹介。放送作家だった井上ひさしさんに劇作を依頼した「日本人のへそ」や「11ぴきのネコ」「表裏源内蛙合戦」などに出演、演出も手掛けた。2人のコンビで話題作を次々と生み出した。

 声優の草分け的存在でもあり、海外テレビシリーズ「ヒッチコック劇場」のアルフレド・ヒチコック監督や、NHKで放送された「名探偵ポワロ」のポワロの吹き替えは25年間務めた。NHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」の海賊トラヒゲ役も担当した。人気アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌でも知られた。俳優としてドラマや映画にも数多く出演した。

 ◆熊倉一雄(くまくら・かずお)1927年(昭2)1月30日、東京都生まれ。53年に日本テレビに入社したが、演劇への興味が強く、56年に劇団テアトル・エコーに入団。俳優、演出家として活動。57年日本テレビ「ヒッチコック劇場」の吹き替えで声優として成功。人形劇「ひょっこりひょうたん島」や海外ドラマ「名探偵ポワロ」の声優も務めた。「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」などのナレーションも担当。91年に紫綬褒章、98年に勲4等旭日小綬章を受章。