シンガー・ソングライター川島ケイジの東京・サントリーホールブルーローズでソロライブを取材した。

 サントリーホールといえばクラシックの殿堂で、ロック系シンガーがステージに立つのは極めて稀なケースだろう。

 ライブ会場となったブルーローズはいわゆる小ホールだが、このブルーローズ(青いバラ)の従来の花言葉は「不可能」「あり得ない」だった。しかし、バイオテクノロジーの進化で、青いバラが「アプローズ」の名で定着すると花言葉は「夢はなかう」に変更された。なお、この「アプローズ」も「称賛」「喝采」を意味する英語だ。そんな意味のあるホールで、川島がライブを行ったのは、偶然ではないだろう。

 今回のライブは川島のギターボーカル、ピアノ、パーカッションという必要最低限のアコースティックで行われ、曲もバラード中心となった。ごまかせない会場、ごまかせない編成で、至極のバラードを披露したその実力を全身で感じることができたのだ。

 中でも個人的に魅了された曲がある。「スノーダンス」という曲だ。今まで詞が英語だったが、今回、日本語で披露された。今までとまったく違った印象で、繊細なメロディーと詞の内容にまるで心臓をわしづかみにされたような衝撃だった。日本語にすることでこんなに雰囲気が変わるんだと、日本語の良さをあらためて感じさせた。ぜひ次のアルバムに収録して欲しい作品だ。

 昨年12月31日に亡くなった音楽プロデューサー石坂敬一さんに見いだされてデビューした。石坂さんが亡くなる直前まで「川島ケイジをよろしく」と関係各位にアピールしていたというその魅力が、私のような人間にもちょっとだけ分かった気がした。

 青いバラの花言葉が「不可能」から「夢はかなう」に変わったように、夢はかなえるもので、そのためにはたゆまぬ努力が必要だろう。逆を言えば、諦めた時点で、夢がかなうことはなくなる。

 自分の人生に当てはめ、胸に手を当てて考える機会となったライブだった。