松坂桃李(30)が時代劇初主演した映画「居眠り磐音」を先日見た。

個人的な感想だが、想像以上に楽しめた。時代劇の王道の勧善懲悪ストーリーがありつつも、序盤の展開はサプライズがあり、結末は男性の私にとって非常にせつなく、やりきれない気持ちも喚起させられた。

17日に都内で行われた初日舞台あいさつでは、本木克英監督が「京都の活動屋が(逸材を)1人見つけたと言っていた」と、松坂の時代劇適性を絶賛。松坂も「時代劇をもっと盛り上げたい」と意欲をみせていた。

ご存じの通り、同映画は公開前、麻薬取締法違反容疑で逮捕されたピエール瀧被告(52)が出演予定だったことが話題になった。公開中止という選択肢もあり得る中で、奥田瑛二を代役に立て、公開に至った。

映画に限らず、不祥事を起こした芸能人が出演した作品の扱いは難しい。出演の度合いや影響力も含め、オートマチックな判断はできない。公開の是非について、賛否も分かれるだろう。再撮影にも、多大な労力が費やされた。

ただ今作は、松坂や奥田、木村文乃(31)や柄本明(70)と佑(32)親子ら実績十分の俳優だけでなく、芳根京子(22)や杉野遥亮(23)、宮下かな子(23)、南沙良(16)といった有望な若手、さらには子役も多く出てくる。芳根は波瀾(はらん)万丈な、物語の鍵となる女性を熱演していたし、若手や子役たちも、慣れない時代劇でありながら、躍動した演技を見せていた。

彼らにとって今作の経験がキャリアに与える影響は、ベテラン以上に大きいはずだ。もし公開中止になっていたら、彼らの未来はまた違うものになっていたかもしれない。

今作で、芸能人1人の行動が、さまざまな人間の運命を背負っていることをあらためて実感すると同時に、松坂の新境地や、若手の熱演が世に残ったことは、素直に安堵(あんど)している。

松坂が初日舞台あいさつの最後で述べた「ここまで来たら本当に何も言うことはありません。今日この日まで導いてくれた(松竹)宣伝部のみなさん、ありがとうございました。この日を迎えられたことを本当にうれしく思う」という心からの言葉は、胸に響いた。