日本テレビなどが主催して開催中の展覧会「ルーヴル美術館展 愛を描く」が人気だ。“愛”をテーマに、16世紀から19世紀半ばまでの西洋の絵画を取り上げたもので、3月1日に東京・六本木の国立新美術館で開幕以降、順調な客入りをみせている。5月1日の発表では来場者が25万人を突破。同様の展覧会ではコロナ禍前の2018年から2019年にかけて同局が東京と大阪の2会場で開催した「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」の動員計約70万人を超えるペースだという。コロナ禍を挟んだヒットの背景にはどんな仕掛けがあったのか。今回のイベントプロデューサーを務める日テレの福井雄介氏(45)にその狙いを聞いた。
人は“愛”に集まるのか。福井氏らの思いは的中した。コロナ禍の影響で美術展の本来のメイン層である年配客の来場が鈍っている状況を考慮し、ロゴデザインや配色の段階から若い女性をメインターゲットに据えた。「コロナ禍が徐々に明けてきている中で、若い人の方が早めに動き出していました。であれば広報宣伝アプローチは、そちらに振り切ってみようと。全体的な雰囲気がポップすぎて、年配層の方には最初は敬遠されたとしても、若い人が来てくれれば埋められると考えました」。
ロゴ作成では福井氏らが「LOUVRE」の文字の中にある「LOVE」の抽出やハートの要素をデザイナーに提案。ルーヴル美術館側にも「面白いですね」と快諾され、UとRのみを小さなハートマークの集合体で表した、ピンク色主体のクールでかわいいロゴができあがった。
メインビジュアルにも絵の中にハートが描かれているフランソワ・ブーシェの「アモルの標的」と、愛の神アモルがプシュケにキスをする瞬間を描いたフランソワ・ジェラールの「アモルとプシュケ」をチョイス。展示では大きくは4つに分けたエリアのうち、最終エリアを撮影OKとするなど、SNSでも拡散しやすい環境を整えた。
実際にメインビジュアルやロゴ、近隣の六本木にある東京ミッドタウンに会期中展示しているハートのオブジェなどを写した写真は、SNS上でも多くみられ、福井氏も「TikTokで取り上げられている動画もありましたし、来ているお客さまも通常より若い女性が多い」と手応えを語る。
同展の“案内人”を務める俳優満島ひかり(37)と、人気声優森川智之(56)による音声ガイドも好評だといい「広報、宣伝という側面では、従来の考え方だけだとお客さんに来てもらえない。『行ってみたい』『撮ってみたい』と若い人に思ってもらえるような仕掛けがうまくハマった結果」と自信を込めた。
チケットを持っていない人でも入ることのできるグッズ売り場にも工夫をこらした。これまでも行っていたパリ発祥の紅茶専門店「マリアージュ・フレール」とのコラボをはじめ、愛や「原罪」の象徴とされるリンゴを使ったアップルパイの名店「グラニースミス」、コーヒー専門店「猿田彦珈琲」とはグッズ売り場と店舗双方でコラボ商品を販売している。
ほかにも、幅広い世代に人気の「すみっこぐらし」との商品や、日テレ系情報番組「夜バゲット」(金曜深夜1時59分)とのつながりで番組MCの郡司恭子、川端一志両アナウンサーが提案した「ALEXANDRE DE PARIS」や「FEILER」とのコラボ商品も製作。「グッズやコラボにはかなりこだわりましたし、公式図録も含め、売れ行きも好調です」。記者が取材した日も午前中から多くの人がグッズ売り場にもとどまり、商品を手に取りレジに列をつくる様子がうかがえた。
同じく主催に名を連ねるニッポン放送とも連携し、「乃木坂46のオールナイトニッポン」内でパーソナリティーの久保史緒里(21)主演のルーヴル美術館展開催記念連続ラジオドラマ「監視員しおりは座らない~愛とはなんだ?~」を、ストーリーレーベル「ノーミーツ」と組み、3月1日から8週連続で放送。普段、美術展などに行かない層へのリーチも狙った。「この放送を聞いて美術展にも行ったという投稿もありましたし、良いコラボになった」(福井氏)。
加えて同局の郡司恭子アナ、徳島えりかアナ、岩本乃蒼アナがゲスト出演する同ラジオドラマのスピンオフ作品も製作。同作を聞くことのできる2次元コードが印刷されたトランプ型のチラシは展覧会会場などで配布し(現在、本展公式HPでも聴取可能)、岩本アナは本編にも登場するなど、横のつながりも使ったPR戦略で幅広い層に「ルーヴル美術館展」の存在をアピールして話題性を高めた。
展覧会は6月12日まで国立新美術館で行い、その後は6月27日から9月24日まで京都市京セラ美術館でも実施予定。国立新美術館では開幕から事前予約制をとっていたが、5月8日以降はコロナ禍規制の緩和もあり予約不要に。また、金、土曜のみ20時までとしている夜間開館(19時30分最終入場)を5月3日、4日、6月7日、8日、11日にも実施することを決定。より自由なタイミングで足を運ぶことが可能となる。
福井氏は「コロナ禍以降、ほぼ全ての大規模な展覧会は予約制となっていました。それも撤廃となり、いよいよコロナ収束の象徴的な出来事とも言えます」と語り「ルーヴル美術館展は、ジャン=オノレ・フラゴナールの『かんぬき』をはじめ、日仏の主任研究員の方が厳選した、73作品が並ぶ中身自体も素晴らしいものです。愛と言っても、ピュアな恋愛から、古代ローマ神話の愛、宗教の愛、不道徳な愛、官能的な愛などさまざま。ぜひ最終日まで多くの人に来ていただき、絵の中に込められた愛の秘密やストーリーを楽しんでもらいたい」と期待を込めた。【松尾幸之介】



