“しゃべり屋”古舘伊知郎(71)が、今月7日の東京・EXシアター六本木から「古舘伊知郎トーキングブルース 2025」をスタートさせた。来年1月からは福岡、名古屋、大阪、横浜と“しゃべりの巡礼”に出る。テーマは「2025(ニセンニジュウゴ)」。今年を2時間、ノンストップでしゃべりまくる。古舘に聞いてみた。【小谷野俊哉】
◇◇ ◇◇
「『トーキングブルース』を持って来てくれた、今は古舘プロジェクトの会長やっている人ですけど、佐藤(孝)という人が報道ステーションのプロデューサーでやっててくれて、いい意味で意地悪をしてくれた。もう毎日のように自民党からいろいろ怒られて、こういう放送したじゃないかとか、お前はこういう風に言ったけど訂正しろ、と。そういう時に謝ってしのぐわけですが、ただ意気地があるから『こういう風に番組として放送したことについて、ここは過失がありました。深くおわびします』。『自民党からこういう抗議文が来ました。そして私が発した言葉のこの部分だけを切り取った場合につき、誤解を招く発言だから本当に陳謝します』。こういう風にやりながら、ここは謝りません。この抗議に関しては謝りません。これについては謝りません。という風に仕分けするんですよ」
謝罪の言葉に素直に従ったわけでない。
「最終的に、そういう時は僕の言葉じゃなくて、政治部のデスクが書くんです。いろいろ考えて、四方八方を考えて上がってきたのが。でも、絶対嫌なんですよ。もっとちゃんと『謝ること』と『謝らないこと』を区分けしたいわけです。それでやろうとするんだけど、それをプロデューサー役の佐藤さんに見せたら『こんなんじゃダメだ。甘い』と。もっとちゃんと謝って、もっとここは謝らないというのを打ち出すべきだ、と。あと50秒で放送が始まるのに、わざとゆっくり直すんですよ。このぐらいの覚悟でやってもらいたい。お前にはまだ甘いところがあるんだってはっきり言われてね、意地悪だから」
プロデューサーからの厳しい指摘を受けて、謝罪の言葉の原稿を持って放送に臨んだ。
「後輩を沖合まで連れて行ってね。その後輩が泳ぎをうまいと思ってるわりには荒波で弱いのを見抜かれて、沖合で海にぶち込まれてるのと同じだと思うんですよ。そうやって直された原稿を持ってスタジオに飛び込んだ時に、もう読めないし、自分の言葉じゃないんですよ。瞬時に頭を回転させて、大意だけはくみ取っているから『ここについてはしっかりと陳謝いたします。一方、ここについて、なぜ我々が謝らないかというと……』と。その場で、誰がしゃべっているんだろうみたいに思いながら、同時編集してしゃべり出しているんです。それに、頭の回転がついて行くまでの20秒ぐらい。『こんばんは』って言って、原稿を見ても絶対に読めない。黙りこくっちゃって、この20秒は言葉が出なくなった」
「報道ステーション」を始めた時は49歳だった。61歳で
「初めてのことだよ。50代後半になってしゃべりはそこそこいける。どんなに何もネタがなくても、その場をしのげるって調子づいてたバカが、初めて絶句してるんですよ。20秒、自分の体感だと5分も黙ってる感じ。生き地獄ですよ。どうしていいか分かんないですから。そういう体験をさせてもらうと、自分の弱点もはっきり見えてくる。それどうするんだって話になって、強烈なワクチンぶち込まれた感じがして、これは大事だなと思って」
「その時ですよ。戸塚ヨットスクールってありだと思って。人を蹴ったり殴ったりするがダメなんで、精神的な戸塚ヨットスクールは、ありなわけですよ。だから軍隊がいいなんて思わないけど、昔先生が頭こずくとかいうのは、今は大罰というのは暴力になるけど、そういうことも体に染み込ませるんだって。それを脳科学的に養老(孟司)先生に聞いたけど、それは体に染み込ませるって、身体性を覚えさせて、痛みっていうのを記憶させることで、脳が切り替わって生命を維持する自分が変わって来るっていうのがあるんですね。だから僕は暴力を受けたわけじゃないけど、そのぐらいショック療法を受けたってことで感動して、これはちょっと1つ、俺は成長したんじゃないかと思った」
自身の成長を確信したことで、「報道ステーション」時代にサブキャスターの後輩にも同じ経験をさせた。
「今は(TBS)『news23』をやってる小川彩佳に同じことやったことあるんですよ。これ本当に、かわいい子には旅をさせよって言ったら生意気ですけど、今や彼女の方がニュースキャスターで売れてるから逆転しちゃってて申し訳ないんだけどね。偉そうに『古舘さん、私も古舘さんのように自分の言葉でしゃべりたい』と。出向部から上がって来る原稿を読むのが嫌だって。そうだろうって言って、優しく打ち合わせをしたんです」
古舘のアドバイスは、伝わらなかった。
「その段階で、俺の生意気なレクをしても分かんない、体で覚えなきゃダメだったんです。本番でやろうって。『どういうことですか』って言われても、どういうこともないんです。『本番でどうしたらいいですか』って。コマーシャルが1分半入っていて、その間に原稿を全部消してやるんだって。俺も真剣ですよ。意地悪じゃない。書いておいて読めませんって『読めない』じゃなくて『読まなくていい』から。自分で言いたいことがあるって言ったんだから、それを言えばいいって」
小川彩佳キャスターは、古舘のアドバイスに従って挑戦した。
「CM明けの瞬間に、彼女も5秒ぐらい黙って、ちょっと原稿を見ながらたどたどしく自分の言葉で。反省会で『ダメだった』って言ってたけど『いや、あれがいいんだよ』と。あのショック療法があったんですけど、その後は全然言うことを聞いてくれなかった。相当ショックだったみたいです。だからかなり根にもたれてるんですよ。俺が意地悪をしたと思われてるんだろうけど。今度会ったら謝りたいって言うのと同時に、意地悪じゃないって言いたいんですけどね、誰か伝えておいてください。あれはいじめじゃないですよ。5番街のマリーじゃないけど<歌詞>伝え~てほしい~って、本当ですね」
▼「古舘伊知郎トーキングブルース『2025』」
26年1月18日 福岡・Zepp福岡
26年2月12日 愛知・Zepp名古屋
26年3月7日 大阪・Zeppなんば
26年3月20日 神奈川・Zepp横浜
◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年(平2)フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。89~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、TBS系「ゴゴスマ」水曜日コメンテーターなど。血液型AB。



