無敗の3冠馬から大種牡馬へ-。昨年に引退したコントレイル(牡5)が1年目の種付けシーズンを終えた。約190頭と交配して受胎率も高く、種牡馬としても優れた資質を示した。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、太田尚樹記者が社台スタリオンステーション(SS)を訪ねて近況を取材。祖父サンデーサイレンスや父ディープインパクトに続くスーパーサイアーとなる可能性を探った。

漆黒に輝く青鹿毛の馬体は丸みと厚みを帯び、貫禄を漂わせていた。種牡馬コントレイルだ。対面するのは引退した昨年11月以来9カ月ぶり。受話器型の流星が映える愛らしい顔つきは相変わらずだが、心身とも重厚感を増した感がある。

1年目の種付けシーズンを終え、前途は洋々だ。約190頭と交配。周囲を安心させたのが受胎率の高さだ。交配頭数が同じでも不受胎が多いと、種付け回数が増えて身体的負荷も大きくなり、代替の種牡馬へ回さざるをえないこともある。重要な種牡馬の資質だ。

“学者肌”の賢さが生きたのかもしれない。社台SSの徳武英介氏からは「論理的に考えるタイプで、学者っぽいところがありますね」と、興味深い指摘を聞いた。小柄な体格のため、交配時に大柄な牝馬を相手に苦労する場面もあったが、休憩を挟んで違う体勢でアプローチするなど、対応力に優れていたという。

流麗な馬体には、現代の名種牡馬に不可欠なスピードも秘める。G1・5勝はすべて2000メートル以上だが、現役時に福永騎手は「たやすく1200~1600メートルの馬にできると思うほど、スピード能力は高い」と評していた。おそらく産駒が証明してくれるはずだ。

かつての主戦騎手は「ディープインパクト亡き後の後継最有力」と太鼓判を押す。体のサイズも偉大な父とほぼ同じだ。ただ、生き写しというわけではない。米国生まれの母は超一流のダート血統で、徳武氏は「シルエットは米国の馬。首が短めで背中のラインはゴツゴツしています。ディープのつもりで種付けしていますが、同じ馬ではないので、違うタイプが出てくるかもしれません」とみる。

だからこそ来年に生まれる初年度産駒には注目だ。その傾向が2年目へ生かされる。「生まれてくる子の特徴を明確にして、なるべく合う牝馬を集められれば、あとは自然に結果が出てくると思います」(徳武氏)。来夏のセール上場、そして3年後のデビュー。今から待ち遠しいばかりだ。【太田尚樹】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)