感嘆するしかなかった。21日、千葉・幕張に3月に完成した高円宮記念JFA夢フィールドのクラブハウス内部が報道陣に初公開された。時節柄、検温に手の消毒後、ビニール手袋を着用して入館。日本代表の新拠点内部を約1時間、JFA職員の説明に耳を傾けながら巡った(https://www.nikkansports.com/soccer/japan/news/202009210000630.htmlを参照)。日本代表ロッカー室、大きな浴槽が4つもある大浴場、トレーニングルーム、大会議場、天然芝と人工芝のピッチが2面ずつにフットサルアリーナ…総工費約42億円の施設に目を奪われた。

A代表と五輪代表を率いる森保一監督はほぼ連日、新施設2階にある監督室で仕事にあたっている。選手をチェックするために膨大な量の映像に目をこらしては、スタッフとミーティング。ひと息つくときはガラスの扉を開けてベランダに足を運び、天然芝のピッチの緑で目を休める。「目が疲れてきたな、気分転換したいなという時はベランダに出て、ピッチを眺めて新鮮な空気を吸ってリフレッシュできたり、いい環境で仕事できています」と、環境の充実ぶりを口にした。

ハード面はもちろんだが、この施設の素晴らしさは他にもある。森保監督は「日本代表の各カテゴリーがクラブ化しているみたいな、いい場所だと思う」と表現した。A代表に五輪代表、なでしこ、フットサルにビーチと、ここでは各カテゴリーの指導者やスタッフはもちろん、医療やトレーニングのスタッフらが業務に携わる。カテゴリー別の部屋はなく、広々としたフリースペースや会議室を活用。違うカテゴリーの代表が合宿をすれば、気軽に練習を見学にいくこともできる。必然的に顔を合わす回数が増える。普段ならあいさつで終わる会話も、サッカー談議へと発展していく。実際、森保監督はU-19(19歳以下)やフットサルの練習を見たという。「日本サッカーのレベルアップ、発展のために、サッカーファミリーとして一緒に頑張っていこうという雰囲気は持てていると思う。すべての人と距離が近く感じて、(施設内で)すれ違うことも多くなっている。日本代表はクラブチームと違って関わる人も多い。チームもアンダーカテゴリーであったり、たくさんのチームが協会内にある。夢フィールドに行くことでクラブチームのように、ファミリー感をもってお互いが接することができるのはすごく良い場所」と、うなずいた。

どのカテゴリーも、目指す方向は「勝利」と「日本サッカーの発展」で一致する。指導者やスタッフのコミュニケーションが活発になり、意見を酌み交わし、新たな知見を得て、刺激し合うことで、日本サッカー界の土台をより強固なものにできるだろう。高円宮記念JFA夢フィールドは、日本代表が「ワンチーム」として成熟度を深めていく場所になる。【浜本卓也】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆浜本卓也(はまもと・たくや)1977年(昭52)、大阪府生まれ。03年入社。競馬、競輪担当から記者生活をスタート。静岡支局、サッカー、K-1、総合格闘技、ボクシングなどあれこれ渡り歩き、直近はプロ野球を8年間担当。18年12月にサッカー担当に復帰した。