アダルトビデオ(AV)の帝王が、世界に挑むサッカー日本代表へエールを送った。「昭和最後のエロ事師」村西とおる(74)。自身の生きざまを描いた『全裸監督』は動画配信大手のネットフリックスで全世界に配信され、大ヒットを収めた。世界を股にかける男は、代名詞「法螺貝(ほらがい)の笛」の音色が、勝利を呼ぶナイスなアイテムだと説いた。ワールドカップ(W杯)に向け異業種のカリスマからのエールを、5回連載します。

【取材・構成=栗田尚樹】

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お待たせいたしました。お待たせ、し過ぎたかもしれません。前科7犯、コモドドラゴンより、絶滅危惧種の村西とおるで、ございます。このたび、AV界のカリスマとして、サッカー日本代表へのエールを拝命しました。今や世界でも有名な私ですよ。欲しがり過ぎです。ただ、求められるのは嫌いじゃありません。

なぜ、私が有名かと言いますと皆さま、『全裸監督』を知っている訳です。外国の方は、私を演じてくれた山田孝之君を見かけて、「トオル」って言うわけです。ネットフリックスの会員は世界で2億人以上。映画大国のインドで1位ですから。国賓待遇になっちゃうんです。この間はフランス、ブラジルから取材が来ました。中国ではネットフリックスを見ることができないのですが、中国の取材チームが撮影した私のドキュメンタリー映像は公開してすぐに350万人以上に視聴されました。

エロス、ポルノの世界で天下を取ったのは、アメリカでも、エマニュエル夫人を輩出したフランスでもないんです。日本です。トオル・ムラニシです。だからね、サッカー発祥の国が、うんぬんは関係ないんですよ。私みたいな存在が日本にいるんですから、日本代表もね、ベスト16が最高成績? ベスト8が限界じゃないかと、そんなこと考えちゃ駄目ですよ。

勝てば官軍です。武器になるものは何でも持って行って勝負しないと。私が使っている法螺貝の笛をね、読者の皆さま3人に抽選でプレゼントいたしますよ。南アフリカのW杯でブブゼラというラッパのようなものが話題となりましたが、あれはお祭り騒ぎ。私の笛は立証されているんですよ。日本古来、山伏のシンボルのような“高野山で鍛えられた”笛です。女優さんが領域に達して吹くと、熱量が違うわけよ。高揚しちゃう、集中しちゃう、機運が上がる。

これをカタールに持って行って、試合前にプープープーッって吹いてもらいたいのです。もちろん女性のサポーターの皆さまにですよ。プープープーッってね。ビューティホーです。ナイスですね~。世界の人たちは、全裸監督で見ているわけだから「これか、これは敵わない」となりますよ。

私はね、カタールにスペシャルアドバイザーで行こうかな。カズ、三浦知良選手をコーチに引っ張って来て。カズはW杯に行けなかった、何とかW杯に関わって欲しいんです。日本は、カズという宝を持っている。彼はあの年で、カテゴリーを下げても現役を続けている。まだ終わりたくない、そんな怨念を持っている。これをスピリットとして、代表選手に伝えてほしいのです。

長友選手も好きなんです。彼の目がいいんですよ。これでW杯4回目? 火の玉になって、自身の人生に汚点を残したくないと、その執念で鼓舞してほしい。私、カズ、長友の「今に見ていろ、このまま死んでたまるか、グループ」で結集して戦いたいね。

諦めることなんて、いつでもできるんです。限界はいつだって、自分で作る限界だということですよ。私なんかね、借金50億円あったんですよ。ある時、5000万円を借りていた知人の男から「ドライブに行こう」と連れ出され、気付いたら群馬の山奥。ダムがあったんですね。体で返そうか、という雰囲気でもない。彼が言うんです。「貸したお金はもう返さなくていい、その代わりにここから飛び降りて」と。私はね、命を差し出すわけにはいかないですよ。諦めるという選択肢はありませんでした。1時間くらい話しましたね。「私は年商100億やっていた男ですよ。あっという間に倍、いや10倍にして返しますよ。チャンスを下さい。もうかりますよ。もうからせますから」と。相手も諦めたのか、一緒に帰りました。

人間はね、ここ一番という時に勝負をしなきゃいけない時があるんです。懲役370年を言い渡された時もそうです。米国の連邦大法廷って知っていますか? 私はそこで裁かれましたから。ビザの詐取などの罪で。人間の寿命はそんなにないのにね。15人のスタッフは懲役20年。弁護士を10人以上雇って、弁護費用5000万円、滞在費も3000万ぐらいかかりました。でもね、ただじゃ白旗を上げない。苦労、挫折は自分の栄養になる、力になる、バネになる。結果的に司法取引で私以外は全員無罪となり、私自身も2800万円の罰金を払って帰国です。最後の最後の最後まで勝負して、勝ちましたよ。日本の相手はドイツ、スペイン? 私は米国政府が相手ですよ。どんな高い壁だろうと、諦めなければ超えられます。

「今に見てろ」って、いう思いがね、私にはあるんです。人の物を盗んだり、人を傷つけたり、人に迷惑をかけたわけではない。私は人に喜び、楽しみ、興奮を与えている、そういう気持ち、プライドでやってまいりました。その中で、何度も逮捕されたりしてね。屈辱がある。私はね、死んでも、死にきれない、そういう気持ちがずっと今日もあるんです。日本も、ナイスファイトですよ。

日本人は村西とおるのことを、「日本人の恥」だと思っていた。しかしね、世界の190カ国の人たちは、人種、国や宗教を超えて、こんな大バカ野郎が日本にいたのかと、見てみたいのよ。はた目から見たら、こんな面白い人生はないのよ。どんな苦労だって、いらっしゃい、ですよ。私は74歳になっても、まだパンツ一丁になって、お待たせいたしましたと、誰もお待たせしていないかもしれないよ。でもあれは、自分に言っているんです。自分に叱咤(しった)激励しているのよ。私がいるんです。不可能など、ございません。日本代表もね、法螺貝の笛の音色を聞いて、最高のフィニッシュを迎えて下さい。日本のW杯優勝は、お待たせ、し過ぎたかもしれませんね。

 

◆村西とおる 1948年(昭23)9月9日、福島県いわき市生まれ。勿来(なこそ)工高を卒業後、バーテンダー、英会話セットのセールスマン、テレビゲームリース業を経て「裏本の帝王」となる。その後、アダルトビデオの監督に転身、3000本以上を制作。「ナイスですね」のフレーズで知られる。

 

◆全裸監督 「AVの帝王」村西とおるが、アダルトビデオ業界で成り上がり、その後は「エロを空から降らせる」という夢の衛星放送事業で失敗するなど、破天荒な生きざまが描かれた作品。ネットフリックスで全世界に動画配信され、大ヒット。俳優山田孝之が村西を演じ、シーズン2まで展開された。

 

◆プレゼント 「法螺貝の笛」を3人にプレゼントします。はがきに住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒104-8055(住所不要)日刊スポーツ新聞社スポーツ部「村西とおるプレゼント係」まで。21日必着。当選者の発表は発送をもって代えます。