名古屋を退団した元日本代表DF田中マルクス闘莉王(34)が故郷ブラジルに新天地を求める可能性が2日、浮上した。中部国際空港着の航空機でブラジルから帰国。日刊スポーツの取材にブラジルのクラブからのオファーがあることを明かし「まだやれる自信がある」と口にした。国内クラブでのプレーも含め「これからしっかり考える」と日本で去就を決断する。

 闘莉王が日本に帰ってきた。昨季まで6年間在籍した名古屋ではこの時期、何度も始動日に遅れ、関係者をやきもきさせた。いつものドイツ経由便で、ほぼ同時期の帰国。違いは所属クラブがなくフリーの立場であること。日本を背負い、徹底して勝利にこだわり抜いてきたDFは「日本は寒いね」と笑い、注目される今後について初めて自分の言葉で説明した。

 「もちろん、まだやれる自信はある。ブラジルからいくつか面白いオファーももらっている。日本でお世話になっている人たちにも相談して、これからしっかり考えたい」

 名古屋でプレーを続けることが最優先だった。しかし、ゼネラルマネジャー(GM)も兼務する小倉隆史新監督(42)がメンバー大刷新を強く推し進める新体制とのビジョンが一致せず、追われるように退団を余儀なくされた。

 気持ちでプレーするタイプ。今も傷は癒えていないようだ。「名古屋でやらないということは、人生で一番難しい決断だったかもしれない。名古屋にはお世話になった人もたくさんいる。その人たちのことも考えると本当に胸が痛い」。1人1人の名前を挙げて申し訳なさそうにした。ただ、燃え尽きてはいない。一部報道では引退も、と報じられたが「それはちょっと違うな」と言った。

 いの一番に獲得オファーをくれ、縁の深い岡野雅行GM(43)がいるJ3鳥取への感謝も口にした。鳥取も含め国内でのプレー継続も否定はしなかった。ただ現状でより具体的なのは故郷でのプレーのようだ。何より、愛する家族が身近にいるという点も大きい。

 この2カ月間は故郷に所有する牧場で「普通に仕事をしていました」と笑う。シャープな顔つきで、体も引き締まっているように映った。迎えに来た家族同然の関係者にも相談し、去就を決断することになる。

 ◆闘莉王退団の経緯 昨季で契約が切れた名古屋からは15年の年俸1億5000万円から1億円減の5000万円の契約延長オファーがあった。態度を保留しシーズン終了直後の11月末に離日。その後は代理人を通じ交渉を続けたが、金額そのものより闘莉王の思いと新体制のビジョンが一致せず1月8日に退団すると申し入れ翌9日に名古屋から退団が正式発表された。(金額は推定)