ベガルタの歴史に新たな1ページが加わった。ベガルタ仙台はアウェーで鹿島アントラーズに2-3と敗れたが、2戦合計5-4とし、クラブ初の4強進出を決めた。前半6分にMF三田啓貴(26)が直接FKを沈め、先制に成功した。後半3分にはFW西村拓真(20)がPKを決め、値千金の追加点を挙げた。その後3失点したものの、J1首位の強豪を相手に最後持ちこたえ、なんとか突破した。

 敗戦を告げるホイッスルが響く中、2人のヒーローはハイタッチを交わした。三田と西村の表情は、実に晴れ晴れとしていた。三田は「ベスト4に進むのは(クラブ)史上初ということで、うれしい」。西村は「本当に緊張感のある素晴らしいゲームができたのは、少し自信になった」とホッとした。

 喉から手が出るほど欲しかった先制点が、いきなり入ってきた。渡辺晋監督(43)は試合前、「攻撃的に行こう」とイレブンを送り出し、アウェーゴールを狙った。FW石原直樹(33)が、欠場者続出の相手センターバックを開始直後から突くと、前半6分、ペナルティーエリア手前の中央で倒されFKを獲得。「ナオさんが(石原)がいい位置で取ってくれた。自分の位置だった」と三田。左足を振り抜き、ゴール右隅に突き刺した。

 西村の度胸も光った。後半3分。ペナルティーエリア右に切れ込んだDF古林将太(26)が倒され、PKを獲得。常時ならPKはFWクリスランの出番だが、今は左内転筋負傷で離脱中。そこで、西村が名乗り出る。堂々とゴール中央を目がけて、決めた。「キーパーを見て、右に蹴ろうと思ったが、当たり損ねて真ん中に行きました」とすまし顔だった。

 だが、同13分と20分に失点し同点に。前に出て守るべきか、引いて構えるか。選手の意思統一に時間がかかった。そして、同38分に痛恨の3失点目を喫した。止まらない相手の攻撃。後半は13本ものシュートを浴びた。だがGKシュミット・ダニエル(25)は「2-2になってから多少焦りはあったが、85分過ぎてから慌てることなくできた」。冷静さを取り戻し、最後は踏みとどまった。

 準決勝(10月4日、8日)でリーグ3位の川崎Fと対戦する。西村と三田はそろって「優勝」を目標に定めた。歴史をまた塗り替えてみせる。【秋吉裕介】