「ミシャ札幌」が待望の初白星だ。北海道コンサドーレ札幌はV・ファーレン長崎を2-1で下し、リーグ4戦目、公式戦6戦目で今季初勝利を挙げた。1-1で迎えた試合終了間際の後半ロスタイム。MFチャナティップ(24)が決勝のヘディングゴールを決めた。今季から就任したミハイロ・ペトロビッチ監督(60)にとって、札幌でつかんだ初勝利。掲げる攻撃的サッカーを貫き、勝ち点3をつかんだ。

 ペトロビッチ監督が喜びを爆発させた。チャナティップのゴールを見届けると、ベンチにいる自身のもとへ一目散に駆け寄ってきたDFキムをがっしり抱きしめ、スタッフと輪になって肩を組んだ。そして両手で拳を握って叫んだ。勝利を告げるホイッスルの音を心地よく聞いた。4分のロスタイム終了まで1分を切っていた中での勝ち越し。欲しかった勝利は、劇的な幕切れで舞い込んだ。「絶対に勝つという彼らの姿勢が勝利になった」。選手ら1人1人を感謝のハグで出迎え、たたえた。

 攻撃的サッカーを90分間やり通した。「私の哲学は『攻撃こそ最大の防御』」と語る。後半8分のFWジェイの先制ゴール後も、守備より攻撃を重視した「哲学」が生んだ。同33分に攻撃力のあるFW都倉を投入し、追加点を狙った。同37分に守備を突かれて同点に追いつかれるも、細かなパスなどで相手を揺さぶり、チャンスメーク。攻撃を続けたからこそ、この日の歓喜を呼び込んだ。

 仕事への責任感は強い。求められているのは結果という自覚がある。だからこそ、指導者としての経験も実績もあるが、努力を惜しまない。どんなに疲れていても、欧州リーグの試合チェックを欠かさない。そのため睡眠時間は3~4時間ほどの日も多い。

 その分疲労も増す。開幕までのキャンプ中に急ピッチでチームづくりをしなければならなかった。乗り切るため、腰に不安を抱える自身のコンディションを整える環境づくりにも余念がなかった。沖縄、米ハワイ、熊本と、専属のトレーナーを自費で同行させた。宿舎でマッサージを受けながらも眠ることなく、チームやサッカーの話は止まらなかったという。そんな愛を注ぎながら、選手を育てている最中だ。

 公式戦5試合で勝てず、サポーターの心配も、簡単に予想できた。前日17日には「結果が出ないと周りがざわつくのはサッカーだとよくあること。いろんな意見があると思う」と話していた。不安視や批判も受け止めながら、臨んだホーム戦だった。「是が非でも勝たなきゃいけないプレッシャーのあるゲームだった。どうしても欲しい勝利でした」。約2カ月間、選手とともに根気強く取り組んだ成果は、これから勝利を積み重ねていくことでさらに証明する。【保坂果那】