湘南ベルマーレDF山根視来(24)が、鹿島アントラーズ戦の後半ロスタイム4分に劇的なプロ初ゴールを決め、チームを2月24日のV・ファーレン長崎との開幕戦以来の勝利に導いた。

 山根は右サイドを駆け上がると、DFがクリアし、目の前に跳ねてきたこぼれ球を胸トラップして、迫るDFを1トラップしてかわし、右足を振り抜いた。「試合が終わったと思わなかった。その後(試合を)締めなきゃと思っていたら、鹿島の選手がガックリしていて、終わったんだと…(シュートを決めて試合が終わったのは)初めてです」と言い、笑った。

 ルヴァン杯ヴィッセル神戸戦当日の4日、同戦に出ないメンバーで、練習後に曹貴裁監督(49)と50分もシュート練習を行ったのが生きた。「曹さんの練習のおかげ。『ボールを見て打て』と、小学生に教えるようなことを言われた。『お前はゴール前で冷静になれないからダメなんだ』と言われた」と、基本の指導を受けたことが、劇的なプロ初ゴールにつながった。

 17年に中盤からDFにコンバートされた。体を張った守備、思い切ったオーバーラップがある一方、もともとはMFで本職ではないためミスもあった。17年11月19日のFC町田ゼルビアとのJ2最終節では、ミスから前半41分で屈辱の途中交代。曹監督から「J1では通用しないぞ」と厳しく叱責された。

 その曹監督は会見で、山根の成長したところ、まだ足りないところを聞かれると「成長していないとも、したとも、いまのアイツを見て思っていないから。今日みたいなゴールを決めるアイツもいるし、何でそこにクリアするの? というアイツもいる。安定感はまだ全くない…ただ、もともと安定感がある選手は、伸びきれないという現実もある。安定していないところが魅力とも思うし、変に小さくまとまっていくよりは、今のサッカー界の常識みたいなのを、ある意味、突き破るプレーヤーになってほしい。ヤツらしいプレーは今日はたくさんあった」と、独特の言いまわしで評価した。

 この日は、フィットネスクラブを運営するRIZAP(ライザップ)グループが、経営権を取得して親会社となることが発表されて以来、初めての試合だった。山根は「すごい、ありがたい話。僕たち、チャンスをいただいていると思う。今までの歴史があってこそ…多くのサポーター、スポンサーの方々に支えられてのベルマーレだと思っているので、今までの人たちのおかげでと思ってサッカーをしないといけない」と決意を新たにした。

 ライザップの関係者が観戦に訪れたことは知っており「『今日は注目される試合だ』と曹さんにも言われていた。見に来た試合でヘボいプレーを見せたら、何だよベルマーレというふうになる。お客さんに楽しんでもらうサッカーを目指しているので良かった」と笑みを浮かべた。【村上幸将】