札幌大谷が旭川実に1-0で競り勝ち、15年以来5年ぶり3度目の優勝を果たした。後半18分、MF鈴木浩人(3年)が約20メートルの強烈な無回転ミドルシュートを決め、この1点を守り抜いた。今季のプリンスリーグでは5戦未勝利。組織プレーに課題があったが、主将のFW伊東涼哉(3年)がまとめあげ、プリンスリーグ全勝の難敵を下し、本大会(12月31日開幕、埼玉スタジアムほか)出場を決めた。

秋空の下、札幌大谷の選手たちが歓喜の雄たけびを上げた。プリンスリーグでは0-1で敗れた相手に、同スコアでリベンジを果たした。主将の伊東は「最高です。今年はコロナ禍で練習できない中、いろいろな人にお世話になった。関わってくれたすべての人たちに感謝したい」。4月から約3カ月間の練習自粛を乗り越え頂点に返り咲いた。

一瞬のスキを逃さなかった。後半18分、敵陣でボールを受けたボランチ鈴木がペナルティーエリア外から放ったシュートは、鋭く右に変化し、ゴール右に突き刺さった。元大分トリニティ(現J1大分)MFの父貴浩さん(47)ら家族3人が見守る前での決勝弾に鈴木は「目の前が空いたのでここだと。頑張っている姿を家族に見せられて良かった」と喜んだ。

バラバラだったチームが敗戦を糧に絆を強めていった。今季最初の公式戦となった9月からのプリンスリーグは、連係面がかみ合わず1分け4敗と苦しんだ。主将の伊東は「主力11人のうち、山崎以外10人が末っ子か1人っ子。負けん気は強いが、みんなマイペースで、最初は組織にならなかった」と振り返った。

「このままじゃ勝てないで終わる」。伊東はメンバーと話し合いコンセプトを変えた。「やりたいことをやる」から「みんなで合わせる」にシフトチェンジし、次第に練習中のワンプレーの意味を伝え合えるようになった。さらに伊東は「僕は良かったら褒めるように気をつけた。厳しいことはDFの藤本(拓真、3年)に任せた」。主将を軸とした、良さを認め合う共感と支持の積み重ねが、個性的集団を同じ方向に向かわせるきっかけになった。

5年前の全国選手権はPK勝ちで初勝利を挙げた。伊東は「高いレベルで勝っている姿がすごいと感じた。僕らはもっと練習しないと全国では勝てない」。組織力をさらに磨きあげ、次は80分での全国勝利を狙いにいく。【永野高輔】