名古屋グランパスのMF稲垣祥(29)が一発回答で初の日本代表入りを果たした。後半14分に豪快なシュートで決勝点をもたらし、クラブ初の開幕6連勝に貢献。この日負傷したC大阪MF原川力(27)の代表不参加に伴い、試合後に追加招集が発表された。世代別代表の経験もない29歳に、世界へ羽ばたくチャンスが巡ってきた。同代表は25日に親善試合韓国戦(日産ス)、30日にW杯アジア2次予選モンゴル戦(フクアリ)に臨む。

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代表選出の発表は、午後9時半を回っていた。稲垣はクラブを通じたコメントで「ミドルシュートの興奮冷めやらぬまま、代表選出で大変うれしく思います」と正直な心境を明かした。

約4時間前、たった1本のシュートで試合を決めた。後半14分、左CKを起点に迫ってきたこぼれ球。落ち際に狙いを定めると「大好物のボールでした」と右足を振り抜いた。ゴール左隅へ打ち込んだ決勝点。過去5勝1分け21敗と鬼門の敵地で粘り続けた。「チャンスはどこかで来る。今回決められて良かった」。“笑わない男”で有名なラグビーの日本代表プロップ稲垣啓太(パナソニック)とは対照的に? こちらは笑顔で喜びを爆発させた。

広島から加入して2季目。開幕から全6試合にフル出場した。ボランチとして冷静に攻守のかじを取り、チームは5試合連続無失点。そのうち4試合が1-0の完封だ。1試合多く消化する首位川崎Fと勝ち点1差の2位。チーム思いの男は「攻撃陣が守備でも貢献してくれる」と感謝する。

主将を務めた日体大4年時は関東大学リーグ2部降格を経験。甲府でも厳しい残留争いを経験しながら、1歩ずつ進んできた。「今まで世代別代表にも入ったことがなかった僕ですが、精いっぱい頑張ってきます!」。その名をアピールする時が来た。【松本航】

◆稲垣祥(いながき・しょう)1991年(平3)12月25日、東京都生まれ。4歳で競技を始め、東京・帝京高では全国高校選手権に2度出場。日体大を経て、14年に甲府入り。17年から広島で当時の森保一監督(現日本代表監督)から指導を受ける。20年から名古屋。趣味はコーヒー豆と入浴剤集め。既婚。利き足は右。175センチ、70キロ。