復活した笑顔の裏に、安心の食サポートがあった。柔道女子52キロ級の阿部詩(24=パーク24)が5日、全日本選抜体重別選手権で初優勝。まさかの2回戦敗退に終わったパリ五輪からの国内復帰戦を制した。兄で男子66キロ級の一二三(27=パーク24)は左肘負傷のため準決勝で棄権したが、五輪2連覇から再出発。ともに22年以来3年ぶりの出場で、世界選手権(6月、ブダペスト)への挑戦権を手にした。飛躍の裏には万全の支援体制が敷かれていた。
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胃袋も、手にした結果も“おなかいっぱい”だった。2連覇の夢を阻まれた昨夏から約8カ月。詩が国内復帰戦で、再起の頂点に立った。笑みがはじけた。一二三とともに、世界選手権への切符を獲得。「いい1歩になった」と喜んだ。海外を主戦場としてきた兄妹にとって3年ぶりの舞台で、最高の土産を手にした。
大会前からの勝負を制した。2人は前日に福岡入りし、午後5時から前日計量に臨んだ。無事にクリアし、厳しい減量を完遂。すぐさま新たな戦いに臨んだ。
柔道には「5%ルール」があり、計量後に体力を戻す増量が認められている。詩の52キロ級は54・6キロ、一二三の66キロ級は69・3キロまで戻すことが許容されている。一方、翌朝には抽選で選ばれた各階級2人に当日計量があり、その5%を超えた場合は失格となる。今大会も女子48キロ級で該当者が出た。いかに体重を調整しながら、体力を回復できるかが重要になる。
そのカギを握ったのが食品大手、味の素(東京都中央区)だ。これまでフィギュアスケート男子の冬季五輪2連覇の羽生結弦さん(30)や、パリ五輪ブレイキン女子で金メダルに輝いた湯浅亜実(AMI=26)ら、トップアスリートを栄養面でサポートしてきた。
阿部兄妹も21年から同社の支援を受ける。史上初の「きょうだい同日V」を成し遂げた東京五輪の翌22年以来となる国内試合とあって、利点を最大限に生かした。同社協力の下、宿泊先とは別に、調理器具など完備のレジデンスホテルが用意された。そこで提供されたのが、父浩二さんと母愛さんが腕を振るった、同社監修の「勝ち飯」だった。
計量後の夕食では、ともに「ツナのだし炊きご飯」「白米」「ギョーザ」「豚のショウガ焼き」「うなぎの蒲焼」「エネルギー豚汁」といった“回復食”を堪能。もともと「必要なエネルギーはしっかり摂取したい」と、減量中も絶食などせず、食にこだわる詩は、計量後に食事を“解禁”しても胃への負担は少ない。必要な量を体に取り込める状態にあるため、兄と同じ6品に加えて「うどん」「ミートソーススパゲティ」まで口にしたほどだった。
大会当日は、同社の「ほんだし」を使った代名詞的おにぎり「パワーボール」や、アミノ酸やゼリーも含めたエネルギー補給を受けて躍動。ともに世界選手権に挑むこととなった。
今後も国内外で共闘していく。2カ月後に迫るハンガリーの大舞台では、味の素が再び調理拠点を確保して、シェフも同行予定。計量前からの減量食、計量後の回復食、当日の補食サポートなどを受ける。5年目になる援軍がいれば、五輪も含めて5度目の「きょうだい世界一」も朝飯前だ。【飯岡大暉】


