先日、東京体育館で開催された車いすバスケットボールの国際大会を観戦してきました。試合とともに印象的だったのが観客の応援風景でした。私の真後ろに陣取った日本代表の応援団が、着ぐるみ姿の団長の音頭に合わせて、応援グッズをパンパンとたたき、一体感を楽しみながら声援を送っていました。

 今のスポーツ興行は華やかな仕掛け、工夫がないとなかなか観客は集まりません。会場を盛り上げる音楽やライト、応援団は特に重要です。これまでパラスポーツは淡々と試合を進行させることだけで精いっぱいで、観客は応援の仕方も分からなかった。それが、ようやく雰囲気を楽しみながら観戦する人が出てきた。何だか感慨深かったですね。

 若い女性の会話も新鮮でした。「英国の3番の選手、写真よりかっこよくない?」などとパンフレットと見比べて「イケメン探し」に夢中になっていました。何度か会場に足を運ぶことで、足が動かない車いすの選手としか見えていなかった人たちにも、選手の顔が見えるようになった。こんなところから障がい者へのハードルが下がってくるのだと思います。

 パラスポーツの新たな楽しみ方はいろんな方向に広がっています。ボッチャを最新のデジタル技術を駆使してエンターテインメント化した「サイバーボッチャ」が8月に発売されました。ゲームセンターのゲーム感覚で楽しめるので、アミューズメント施設などで普及すると、パラ競技だと知らずに遊ぶ人も増えて、競技の普及とはまた違ったボッチャへの入り口になるはずです。

 実は私もチェアスキーで同じようなことを考えていたところです。世界中のアルペンコースを動画で撮って、体重移動やジャンプ、旗門が近づくイメージなどがバーチャルで体験できるようにゲーム化する。山頂からの360度のパノラマ、景色の変化まで疑似体験できれば、やってみたい人はきっと多いと思います。

 パラスポーツにはいろんな可能性を秘めたものがまだまだ数多くあります。発想力、企画力のある人たちが、20年東京大会へ向かって新しい楽しみ方を発見していけば、パラスポーツへの間口はさらに広がり、そこからまた新たなチャンス、新たなビジネスが見えてくるはずです。

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、来年の平昌パラリンピック日本選手団長。電通パブリックリレーションズ勤務。45歳。