女子50メートル背泳ぎ(運動機能障がいS5)で成田真由美(50=横浜サクラ)は50秒04にとどまった。

「何がいけなかったのか、今の段階では見つけられないですね」

自らの日本記録46秒74に遠く及ばないタイムに首をひねるしかなかった。大会前の練習でも、この日のウオーミングアップでも好調で、ゴールした瞬間は「46秒台が出ている感覚だった」という。

新型コロナウイルスの影響で1年2カ月ぶりの実戦。パラリンピック5大会出場で金15を含む20個のメダルを獲得している「水の女王」でも、長いフランクでレース勘にブレが生じていたのかもしれない。それでも、表情は明るかった。

「大会を開催していただいたことに、まず感謝したいです。コロナに苦しんでいる方や医療スタッフの方のことを考えると、自分が泳いでいいのか迷ったこともありましたが、やっぱり泳いで結果を出すことが自分の役割だと」

昨年4、5月はスイム練習がまったくできなかったが、プールに戻った時にあらためて水泳の楽しさ、水の中の心地よさを再認識したという。

東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事として、橋本聖子新会長の選出にも関わった。日本を代表するパラリンピアンとしてプール内外で重責を背負ってこの夏に向かう。

「今回は無観客で、静かな試合は寂しいですが、多くの方の協力で大会ができるのはうれしいこと。アップの時のプールの人数制限や選手の動線など、感染防止対策も出場して初めて分かりました。東京パラリンピックはボランティアのみなさんはじめ、いろいろな方の協力がなければ開催できないですね」

08年北京パラ後に1度は第一線を離れたが、東京パラ開催が決まって復帰し、16年リオパラで2大会ぶりに代表入りした。東京を自らが泳ぐことで大会への注目度が高まり、競技普及や選手発掘につながればと願ってのことだ。女王は6大会目の出場をかけて5月の代表選考レース、ジャパンパラ大会(横浜)に臨む。【小堀泰男】