150秒にかける青春〈16〉悲願の初V!スモールグループス男女混成 選手5人と指導者の物語

スモールグループス男女混成で日本が快挙を達成した。社会人、大学生、高校生で編成した5人による65秒以内の演技。それぞれが思い入れのあるユニホームで出場し、悲願の初優勝を飾った。週末に夜行バスで関西に集まって練習するなど、苦労を重ねて手にした栄冠だった。5人の選手と指導者の知られざる物語。(敬称略)

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戸出笑光里(左)、柚山愛美香

戸出笑光里(左)、柚山愛美香

日本勢初の快挙~目にした光景

〈柚山愛美香、戸出笑光里〉

世界一になったことを知ったのは会場の通路だった。

演技が終わるとすぐ、日本チームはドーピング検査室にいた。

先に女子2人だけが部屋を出る。

指導に携わっていた立命館大学チアリーダー部ヘッドコーチの安西友香が、そこで待っていた。

「聞いた? 優勝! 優勝したよ!」

3人で抱き合って喜ぶ。

夢の中にいるような感覚だった。

トライアウトを経て、5人が集まったのが9月の初旬。

「初めまして」-

そこからスタートしたチームが、世界の頂点に立った。

2015年の第8回ドイツ大会から始まったスモールグループス男女混成は過去にタイが2連覇、前回の2019年日本大会はイタリアが優勝。日本勢としては初の快挙だった。

全員が日本一すら経験がなかった。

チアが大好きで「いつか、見たことがない景色を見たい」と黙々と練習に打ち込んできた。

表彰式の時、立命館大学3年の柚山の目に映った光景がある。

「まだ小さい頃、基礎をたたき込んでくれた先生が会場に来てくれていたんです。

何年も会っていないのに群馬まで来てくれて、手を振ってくれるのが見えて感動しました。

家族もそうですし、これまで支えてくれたコーチたちに恩返しをすることができた」

それぞれに、それぞれのドラマがある。

家族へ、恩人へ-。

5人と指導者の物語。

初めて集まった日

初めて集まった日

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。