90年代から30年もの間、S1班の座に君臨していた大御所レーサーの三宅伸(53=岡山)が引退することが、17日に分かった。

89年にデビューし、翌年にはS級昇格。同期の高木隆弘、有坂直樹とともに、64期3羽がらすとして、ビッグレースで数々の名勝負を演じた。KEIRINグランプリには3度出場。G1決勝には9度進出し、最後となった08年の全日本選抜(西武園)で悲願の初タイトルを獲得した。ここ数年はけがも重なり、成績が急降下。今期は32年ぶりにA級に降格していた。

今年も鎖骨骨折を乗り越えて9月に復帰を果たしたが、復帰2戦目の函館(10月10~12日)で突如、引退を決意した。「けがは慣れっこだったし、鎖骨が直接の原因ではない。函館の2日目が終わって、これはもう無理じゃなと思った。誰にも言わず、これをラストランにしようと決めて最終日は走りました。1着と思ったのに、まさか取鳥敬一に抜かれるとはね(笑い)」。

一番の思い出は、やはり遅咲きのG1制覇だ。「ほぼ不可能と思っていて取れた39歳の初タイトルですね。遅かったおかげで、まだみんなの記憶にも残っとるし、この引退も少しは華やかになったでしょう」。

引退を語る口調にいっさい湿っぽさがないのは、選手人生を悔いなくやり切った証拠だろう。

◆三宅伸(みやけ・しん)1969年(昭44)8月13日生まれ。日本競輪学校(現選手養成所)64期を1位で卒業。89年8月デビュー。08年G1全日本選抜優勝。通算成績2776走、1着430回、2着399回、3着372回。生涯獲得賞金10億8547万6931円。