オーストリア1部リーグのLASKに所属するFW中村敬斗(22)が快進撃を続けている。国内カップ戦を含めた公式戦で開幕から全10試合に出場して8得点5アシストと堂々たる成績。UEFA(欧州サッカー連盟)発表のクラブ国別ランキングで8位につける主要1部リーグで、22歳のアタッカーが躍動している。

特筆すべきはシュートレンジの広さ。リーグ戦では8試合5ゴールと得点ランキング首位に1点差の2位につけるが、計26本のシュートを放ち、そのうち半分以上の16本がペナルティーエリア(PA)外。遠めからでも積極的にゴールを狙いながら枠内シュート率は46・2%と好数値を誇る。8月20日のシュトゥルム・グラーツ戦で決めた右足ミドルは秀逸。PA手前からゴール右上へ決めたコントロールシュートは「クラブ史に残る」と話題になった。

10代からそのプレーは注目を集め、17年のU-17W杯では1次リーグ初戦でハットトリックを達成するなど4試合4ゴール。MF久保建英とともに決勝トーナメント進出の原動力になった。18年に高校2年生でJ1G大阪に加入し、19年にはU-20W杯にDF伊藤洋輝らとともに出場。同年のルヴァン杯で日本代表の登竜門にもなっているニューヒーロー賞を受賞した。世代別日本代表の中心選手として活躍してきたアタッカーが、オーストリアの地でその才能を開花させようとしている。

同国1部リーグで目に見える結果を残した南野拓実、奥川雅也(ともにザルツブルク)はそれぞれ欧州5大リーグにステップアップ。南野は18-19年に公式戦14得点、奥川は19-20年に公式戦11得点をマークしたが、開幕から公式戦10戦8発の今季の中村は、その2人のシーズン最多得点記録に早くも迫る勢いだ。

今シーズンの欧州各国リーグでは、数多くの日本人選手が欧州チャンピオンズリーグ(CL)と欧州リーグ(EL)の国際大会に出場。同時に国内のリーグ戦、カップ戦をタフに戦い続けている。過去には海外のクラブで出場機会を減らして代表戦での試合勘が不安視されたこともあったが、今ではハードスケジュールによる疲労が心配され、実際に負傷者も増えている。

もっとも、それは「世界標準時」であり、各クラブで主力を務める代表クラスの選手の宿命。9、10月と連戦が続き、11月にはワールドカップ(W杯)カタール大会が開幕する。W杯日本代表メンバーは固まりつつあるが、今季の中村の台頭に象徴されるように、その選択肢は確実に増えている。【石川秀和】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「データが語る」)