「W杯にアフリカの時代がくる」。もう何年も前から言われてきた。五輪ではナイジェリアとカメルーンが金メダルを獲得。U-20など年代別W杯でもガーナなどが頂点に立っている。それでも、W杯は8強止まり。壁は高かった。

W杯の出場枠が初めてアフリカに与えられたのは70年メキシコ大会だった。その時に初出場したモロッコが、86年メキシコ大会で初の決勝トーナメント進出。そして90年、カメルーンの活躍でアフリカのサッカーが一躍脚光を浴びた。

開幕戦で前回優勝のアルゼンチンを破ったカメルーンは、38歳ロジェ・ミラの活躍などでベスト8まで進出。当時の選手はほとんどが国内リーグでプレーしていたが、才能に目をつけて欧州のクラブが殺到。これ以降、欧州でプレーするアフリカ選手が急増した。

ここ十数年は、欧州トップリーグの得点ランキング上位にアフリカ勢の名前も増えた。個人としての能力は、世界でもトップレベルにあった。ところが、代表になると勝てない。特に組織的に動くことが苦手で、守備が課題と言われた。

アフリカ勢に守備の意識を植え付けたのは、欧州の指導者だった。日本代表を指揮したトルシエ監督やハリルホジッチ監督らはアフリカで実績を残した指導者だ。アフリカ勢のチーム力は安定してきた。しかし、そういう指導が本来の「良さ」も奪っていった。

前回ロシア大会のアフリカ勢は出場全5チームが1次リーグで敗退した。強豪相手にいい試合はするものの、勝てない。かつてのカメルーン代表にあったようなアフリカの「すごみ」が消えていたように思う。

アフリカの代表には「ライオン」が多い。愛称だ。カメルーンは「不屈のライオン」、セネガルは「テランガのライオン」、そしてモロッコは「アトラスのライオン」。いずれも代表の「強さ」とか「勇敢さ」を表したもの。チュニジアの「カルタゴの鷲」も同じような意味合いだ。

かつてバラバラに獲物を捕らえていたライオンたちが、海外の指導者によって集団で戦うことを覚えた。同時に「調教」で牙も奪われた。「組織」というおりに閉じ込められたライオンは、自ら獲物をとることを放棄。指導者も勝手な狩りを厳しく禁じたのだ。

今大会、モロッコだけでなく活躍しているアフリカ勢。特筆すべきは、監督が全員母国人だということ。最先端の指導で得た組織力を残しつつ、牙を研ぐことも再開した。アフリカ勢本来の「すごみ」が戻った。

モロッコは大会前にハリルホジッチ監督を解任し、同国人のレグラギ監督が就任した。同監督は「変わったのはチームの雰囲気」という。選手が自由に楽しくプレーしているのだと。

前監督が残した強固な守備を持ちつつ、ボールを奪った後に驚異的な推進力で相手ゴールに迫る。そんな二面性も、監督人事を知ると何となく納得する。集団で戦うことを覚えたライオンたちが再び牙を研ぎだした時、今度こそアフリカの時代が来そうだ。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

モロッコ対ポーランド 準決勝進出を決め、記念撮影をするモロッコの選手たち(ロイター)
モロッコ対ポーランド 準決勝進出を決め、記念撮影をするモロッコの選手たち(ロイター)