今年、J1鹿島アントラーズを見る。新しくサッカー担当になり、内田篤人(29)が戻ってきた鹿島を見る。

 内田がいなかった鹿島は、ほとんど知らない。テレビなどで試合を見たとき以外は。ただ、今年わずかながら内田がいる鹿島を見ていて、その存在の大きさを少なからず感じている。それは、周囲の選手の言葉から伝わってくる。

 東京ヴェルディから移籍してきたDF安西幸輝(22)は、宮崎合宿で自ら“内田塾”の門をたたいた。左右どちらのMFもDFもこなす安西はポジションが内田と競合することもあれば、その前でコンビを組むこともある。

 「合宿中に守備の仕方を聞きに行きました。海外でどうやって守備をしていたのかなって。外国人選手の動かし方はすごく難しいと思うんですけど、篤人さんは守備のやり方がうまい。それを聞きたいなと」。

 2月3日に行われたJ2水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチでは、後半の12分間だけだが一緒にプレーした。後方から掛かる声に自然と体が動く。「背中で押されたようなディフェンスでした」と笑った。

 同じ右サイドバックの伊東幸敏(24)は、練習後のクールダウンのときに呼び止められた。自身の動きを見た感想とアドバイスを率直に言われた。そして「1年間、一緒に戦っていこうぜ」「一緒に右サイドバックの質を上げていこう」という呼びかけも…。

 「(西)大伍くんもそうですけど、自分だけ良ければいいとか、自分が試合に出ていればいいとか、そう考える人たちではない。だからこそ、たとえ自分が試合に出られなくても、鹿島で成長できると思います。もちろん、試合に出るためにやることは変わらないですけど、ほかのクラブでは経験できないことの1つかなと思います」。

 内田は「聞きに来てくれた方が楽」と笑うが、自らも率先して若手に話しかけている。それは、周囲が抱いていたイメージとは違っている。復帰に際して求められた1つ、鹿島の伝統やDNAを引き継ぐ-という役割を、自ずと考えているからだろう。

 Jリーグに刻まれているのは、22歳までの若かりしころの内田。29歳で開幕を迎える今の内田の姿には、確かな“幅”がある。

 ◆今村健人(いまむら・けんと) さいたま市生まれ。入社後、スポーツ部にて06年トリノ、12年ロンドン両五輪を経験し、大相撲担当も延べ6年経験。今年からサッカー担当に。