ヴィッセル神戸の生え抜きFW小川慶治朗(25)が新しいポジションに挑戦している。Jリーグ史上初の平日金曜開幕となった2月23日のアウェー・サガン鳥栖戦。後半20分にFW小川は、先発したDF橋本と交代で左サイドバックに入り、その後で右サイドバックに変わった。「公式戦の緊張感もあったし、もっとやれた。サイドバックだと相手の裏を取る回数は増えると思う」。公式戦で初めてDFで出場し、反省と手応えを口にした。

 下部組織出身のアタッカーで、神戸のエースナンバー「13」を背負う。昨季は主にサイドハーフで出場し、25試合2得点。170センチと小柄ながら持ち味のスピードを武器に、サイドを駆け上がって攻撃を仕掛けた。

 DF挑戦のきっかけは、2月13日の練習後だった。吉田孝行監督(41)から「サイドバックってどう? 1回試してみたいんだけど」と声を掛けられた。一瞬戸惑ったが「いいと思います」と返した。「いろいろなオプションが欲しい」と話す指揮官は「彼の特性であるスピードを生かしたい。サイドバックに入ることで、チームが攻撃的になる」とDF起用の意図を説明。元ドイツ代表のFWポドルスキ主将をトップ下で使い、ボランチが主戦場のMF三田をサイドハーフ、同じくボランチのMFチョン・ウヨンをDFでも起用するなど、さまざまな組み合わせを模索している。

 翌14日の紅白戦で初めて右サイドバックを練習。激しい上下運動を繰り返した小川は「疲れた。足がつりそう」と苦笑い。それでも「ランを生かすには後ろから走った方がいいかも。運動量も生かせる。複数のポジションができることは武器になるし、どこでもできるようにならないと成長が止まってしまう」と前向きだった。

 FWとしてのプライドがある。「神戸でタイトルを取ることが夢」とチームの目標達成を優先しつつも、個人的な目標は「得点王は常に狙ってます」とキッパリ。サイドバックの練習をするようになっても「前(FW)でやりたい気持ちはある」と正直だ。今はFWとDFの両方を練習する。「やるからには得点を狙っていきたい」。前でも後ろでも小川が目指すのはゴールだけ。DFで必要なプレーを身につけることが、自分を一回りも二回りも成長させると信じ、チームの勝利のために走り続けている。

 ◆中島万季(なかしま・まき)1988(昭63)年8月11日、鹿児島県薩摩川内市生まれ。高校野球やアメリカンフットボール、高校ラグビーなどを取材し、昨年4月からサッカー担当。