日本対オーストラリア W杯出場を決め、ハイタッチする熊谷(中央)ら選手たち(2018年4月13日撮影)
日本対オーストラリア W杯出場を決め、ハイタッチする熊谷(中央)ら選手たち(2018年4月13日撮影)

スポーツ界にとって、2019年は何の年だろうか。

9月に行われる日本開催のラグビーW杯や、サッカー界で言えば1月にアジア杯があった。

2020年東京五輪へとつなぐ大事な1年。そんな中で、当時の熱狂を再び取り戻そうと奮闘しているのが、今年6月にW杯フランス大会をむかえる女子サッカー界だ。

“なでしこフィーバー”を巻き起こした11年W杯ドイツ大会の優勝からは早8年が過ぎ、選手の顔触れも変わった。16年リオ五輪出場を逃したため、世界との真剣勝負は4年ぶり。そんな、なでしこ復活の年にしたいとの願いも込め、今年の新年企画で代表の主将を務めるDF熊谷紗希(28)にインタビューを行った。自身3度目となるW杯への強い思い、そしてあのドイツ大会を知る者としての覚悟を紹介する。

熊谷が普段プレーしているのは、W杯が行われるフランスの強豪リヨン。リーグ12連覇中に加え、欧州女子CLで史上初の3連覇も達成した世界屈指のチームで、レギュラーとして活躍している。実はW杯本大会では、そのリヨンの本拠地である「スタット・ド・リヨン」で準決勝と決勝が行われる。そこまで勝ち進めば、熊谷にとっては“ホーム”で試合ができる。「そこでプレーできたら最高ですね。できれば決勝でフランスと当たって倒したい」。当然、そこへの思いは人一倍強い。

高倉麻子監督体制になってからは主将も任された。かつてMF澤穂希や宮間あやらが務めてきた大役。自身の思い描くキャプテン像については「もちろん言うことは言う。でも、キャプテンだから何かするというよりは、プレーで引っ張っていきたい」と話した。「澤さんや、あやさんには尊敬するところ、学ばせていただいたところがたくさんある。その中で、自分は自分でできる形でチームを引っ張っていきたい」。

本番まであと4カ月にせまる中、なでしこは2度の海外遠征で最後の調整を行う。2月下旬からの米国遠征では総当たり戦で米国、ブラジル、イングランドという強豪国と対戦。4月の欧州遠征ではドイツとフランスという、いずれも世界ランク上位国と親善試合を行う予定だ。熊谷は「いよいよですね。W杯で優勝するためには強い国を倒さないといけない。(海外遠征での)相手は申し分ないというか、いい相手と戦えるなと思います」と強豪との手合わせを歓迎した。

代表では4年間なかった真剣勝負のブランクだが、熊谷にとっては関係ない。「海外でやっているので、個人的な不安は全くないです。逆にそこの不安や恐怖よりも、やるしかないというところの方が大きい。恐怖とかを感じていたらきついなという部分はあるので、それがないような準備をしたい。経験ある選手が引っ張っていかないといけないし、うまくやりたいなと思います」。主将としての頼もしい顔ものぞかせ、2大会ぶりの世界一奪還を誓った。

◆熊谷紗希(くまがい・さき)1990年(平2)10月17日、札幌市生まれ。真駒内南小3年時にサッカーを始め、真駒内中から女子サッカーの強豪、宮城・常盤木学園高へ進学。同校2年時にA代表初選出。09年の筑波大進学と同時に浦和レディース入り。11年W杯ドイツ大会では決勝米国戦で優勝決定のPKを蹴った。同年にドイツ1部フランクフルトに移籍し、13年からリヨンに所属。15-16年シーズンから欧州女子CL3連覇中。18年11月11日のノルウェー戦で国際Aマッチ通算100試合出場を達成。家族は両親と兄。173センチ、63キロ。血液型O。

◆松尾幸之介(まつお・こうのすけ) 1992年(平4)5月14日、大分県大分市生まれ。中学、高校はサッカー部。中学時は陸上部の活動も行い、中学3年時に全国都道府県対抗男子駅伝競走大会やジュニアオリンピックなどに出場。趣味は温泉めぐり。

女子サッカー界について語る熊谷紗希
女子サッカー界について語る熊谷紗希