FC東京は10月24日、ホームで横浜F・マリノスに0-4と悔しい敗戦を喫した。キャプテンマークを巻いた東京オリンピック(五輪)世代DF渡辺剛(24)らを中心とした堅守がほころび、相手を押し込んでいたいい流れをふいにした。

試合翌日、取材に対応した渡辺からは反省の言葉が続いた。ただその中で、横浜戦で「うれしかった」出来事もあったという。それは横浜のサポーターが味スタに来て応援している光景を見たことだった。

新型コロナウイルスの影響で段階的に入場観客数を増やしていく中で、東京は横浜戦からアウェー側の席を開放した。観客数は9518人。昨季リーグ優勝をかけて激突した最終節(日産ス)で6万3854人が集まった景色とは大きく異なったが、ゴール裏からは確かに、横浜の背中を押す手拍子が響いた。

相手クラブのサポーターがいることに対して「うれしい」という言葉は意外だった。渡辺は「少しずつでも、日常のJリーグが戻ってきているのを感じた」と、理由を語った。無観客で試合を行う寂しさも経験した。現在は歓声こそないが、手をたたく音はある。たとえ相手チームのサポーターであっても、コロナ禍で前に進んでいることを示す存在になっていた。

入場観客数を増やす流れを止めないために、クラブも継続して対策を徹底する。若林運営管理本部長は「ホームである味スタが安全であることを伝えたい」と語る。席数が多いことを生かし、観客同士の距離を確保する。すでに飲食店も再開しているが、購入したものは座席に戻って食べるよう呼びかける。マスクを外すのも、飲食時のみにするよう啓発を続けている。サポーターが増えて応援に熱が入ることで、つい緩んでしまいがちな感染対策を先導して取り組んでいる。

ホームの試合であっても、相手のサポーターがいることでスタジアムの雰囲気は完成する。渡辺の言葉から強く感じさせられた。試合は常に勝ち点3を目指す戦いだが、コロナ禍を乗り越えるという目標に敵や味方はない。入場制限が緩和されて以降もスタジアムへの戻りが鈍い状況が続くが、1日でも早く元の光景が戻ること選手も待っている。【岡崎悠利】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)