10月7日夜、最大震度5強の地震が関東地方を襲った。東京23区で震度5強を観測したのは、10年前の東日本大震災以来だった。いつどこで起こるか分からない自然災害に対して、私たちにできることは「備え」だ。

Jクラブと街が、ともに「備え」をしているケースもある。川崎フロンターレのホームタウン、川崎市中原区・元住吉駅前の「モトスミ・ブレーメン通り商店街」はこのほど、災害時に近隣住民へ電源を提供できるポータブル電源機器を導入した。

きっかけは、19年10月に川崎の街を襲った台風19号(令和元年東日本台風)だった。等々力陸上競技場の最寄り駅の1つである中原区・武蔵小杉駅周辺が冠水し、一部では停電も起こるなど、川崎市は甚大な被害を受けた。中原区商店街連合会の柳沢正高会長は「東日本大震災で電源の必要性を感じた。2年前の水害でも同じことを思った。災害のときは、水と電源が一番必要だった」と振り返る。

商店街が導入したポータブル電源は、川崎Fのスポンサーであるスマートデバイス周辺機器メーカー「アンカー」社製のもの。重さ約4・6キロと簡単に持ち運ぶことが可能で、1度充電すれば最新型のiPhone40台分のバッテリーを蓄えることができる。

連合会でこれを5台を購入し、区内各商店街に配布したという。公共性の高い商店街に設置することで、広く市民の「備え」とすることが狙い。災害時だけでなく、コンセントがない屋外でのイベント開催時にも活用できるという。川崎信用金庫から出向している川崎Fの小林幸太さんは、この取り組みの発案者の1人。「被災時の電源確保として、ゆくゆくは川崎市全体に広めたい」と話す。

クラブの地域貢献には、さまざまな形がある。あの台風から、明日12日で2年を迎える。川崎Fは地域と手を取り合い、地元のための「備え」を広げている。【杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

スマートフォンを充電中のポータブル電源機器
スマートフォンを充電中のポータブル電源機器