今年の天皇杯は、日本サッカー史に残る事件が起きた負の歴史が刻まれた大会になった。
8月2日の4回戦において、浦和レッズのサポーターが名古屋グランパスのサポーターに対し暴力行為を働いたとして、天皇杯を主催する日本サッカー協会は史上初の処分として、浦和レッズの24年度天皇杯参加資格のはく奪が決まったと発表した。
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懲罰を決めた日本サッカー協会(JFA)の規律委員会によれば、2000年以降、浦和サポーターによる懲罰事案は11件にのぼったという。「本件サポーターらには、自らの行為がクラブに招いた結果の重大性をしっかりと受け止めてほしい」と、処分決定時には日本協会が異例の付言も残した。
クラブとサポーターはひとつのファミリーという考え方が日本サッカー界にはある。Jリーグは理念として、クラブの本拠地を「ホームタウン」と呼ぶ。その意味を「Jクラブと地域社会が一体となって実現する、スポーツが生活に溶け込み、人々が心身の健康と生活の楽しみを享受することができる町」を定義している。クラブを応援することで、地域も盛り上がっていく。それがJリーグ構想の大きな柱となっている。
ゆえに、サポーターのトラブルに対してもクラブは責任を負う。場合によってはサポーターとコミュニケーションをとりながら、共栄の形を探ってきた。
サポーターが騒動を起こせば、クラブは調査を行い、必要であればペナルティーを科す。そうして、秩序維持が図られてきた。浦和は特に、熱心なサポーターに支えられているクラブ。サポーターと良好な関係を築くことも、クラブの大切な役割になっていた。
ただ、一部サポーターによる騒動は繰り返された。昨年7月にコロナ禍での声出し応援禁止のルールを破り、Jリーグから罰金2000万円の処分が出た。自浄作用の欠如も露呈され、今回で天皇杯参加資格をはく奪するペナルティーを決断するに至った。
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サポーターが起こした騒動によって、選手が公式戦に出場する機会が奪われる罰に行き着いてしまった。浦和の選手は公にはコメントしていない。ただ、クラブ関係者は「懸命にプレーしていた選手が処罰の対象になってしまったことには、不条理を感じる」と声を漏らした。サポーターの中には、天皇杯の試合前にわざわざクラブハウスに来て応援のために横断幕を貼り、天皇杯の先にあるアジア・チャンピオンズリーグ、そしてクラブワールドカップで、愛するクラブが躍進する姿を願う者もいた。選手を応援する機会を奪われ、怒りに震えていることだろう。
これ以上の暴走を阻止しなければという使命感と、事態を収拾しなければという焦燥感があったにせよ、選手にペナルティーが及ぶという本質から外れた裁定に至ったことは痛恨と言える。タイトルを失うだけではなく、選手のプレー機会が減少することも避けられない。
敗戦に怒り、警察の力を借りなければ止められないほどの暴走を起こしたことはあるまじき行為だ。だが、それによって選手がプレーの場を失うのは、日本サッカーの発展を目指すという大会の意義に逆行している。今回の決定が今後、負の先例とならないことを願うしかないのが現状だ。
当該サポーターへの厳罰は言うまでもない。と同時に、サポーターの行動にまで広く責任を負うのがクラブトップだとする観点に立つなら、選手でなくその立場の人間やクラブに相当な処分がなされるべきではないか。せめて、選手に処罰が及ぶことは阻止すべきだった。サポーターの暴挙が選手の公式戦欠場で償われることなど、あってはならない。
試合会場は変更できなかったのか。過去に起きた騒動の際、サポーターへの働きかけは本当に十分だったのか。サポーターの熱という面においてはJリーグをけん引すべき立場だからこそ、この事態を招く前にクラブが徹底できることはあった。
躍進著しい日本サッカーだが、今回の暴挙とそれに付随する裁定は、日本サッカーが抱えた恥ずべき出来事として、決して忘れてはならない。【岡崎悠利】




