第91回全国高校サッカー選手権の決勝、鵬翔(宮崎)-京都橘は14日に東京・国立競技場で行われる予定だったが、降雪で19日(午後0時5分開始)に延期された。首都圏開催となった76年度以降、大会が延期されたのは、昭和天皇が崩御した88年度以来2度目で、悪天候では初めて。19日は大学入試センター試験当日だが、両校に受験者がいなかったため同日の開催が決定。受験生さながらに“運命の日”となりそうだ。

 数々の名勝負を生んだ国立も「爆弾低気圧」には勝てなかった。首都圏は午前10時半ごろから雨が雪に変わり、サッカーの聖地も見る見るうちに白銀世界に。当初60人態勢で雪かきにあたっていた補助員の数を1時間半後には250人に増員したが、降りしきる雪の前になすすべはなかった。

 慌てた高体連、日本サッカー協会、民間放送43社の主催3者は3度の話し合いの末、試合開始まで約2時間半前の午前11時半に中止を決断。正午に正式発表した。全国高体連サッカー専門部の横田智雄部長(55)は「最初の話し合いではやる方向だったが天候が急変してきたので11時に2度目の話し合いを行い、今度は中止の方向に転じた。さらに30分後、3者で中止の最終確認をした」と一連の経緯を説明した。

 ひと息つく暇もなく、その後は両校優勝か、延期かについての議論に発展。主催者側の一部には両校優勝とする考えもあったが、同部長は「やはり選手権決勝の重みを考えた」と強く反対。授業のある平日を避け、国立競技場が使用できる19日と20日にしぼられた。だが、ここでも問題が生じた。両日とも高校3年生には大事な大学入試センター試験日。すぐに両校に確認したところ、両校のベンチ入り合計40人の中に受験者はいなかった。テレビ各局とも協議し、放送に都合のいい19日を選択。両監督に意見を求めると「決定に従う」と口をそろえたため、延期が決定。3時間半のドタバタ劇は決着した。

 15大会前の「雪中決勝」東福岡-帝京戦は黄色と黒のボールを使い、強行した。今回はその時より2時間ほど早く降り始め、雪上試合は回避された。大会の延期は首都圏開催以降で2例目。89年1月7日の昭和天皇崩御を受け、88年度大会の準決勝、決勝が順延して以来で、天候の理由は初めて。同部長も「それ以前は正確なデータも残っていないが記憶にない」という異例の事態。主催者も、両校の選手・スタッフも、大雪に振り回された一日となった。【湯浅知彦】